貸株サービスはリスクが大きい?貸株のメリット・デメリットを金融の専門家が徹底解説

株式投資を始めて少し慣れてくると、「貸株サービス」という言葉を耳にすることがあります。持っている株を貸し出すだけでお金がもらえるなんて、なんだか怪しく感じてしまいますよね。

でも実は、貸株サービスは多くの証券会社が提供している正式なサービスなんです。ただし、メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解しておく必要があります。

この記事では、貸株サービスの仕組みから具体的なメリット・デメリット、そして上手な活用方法まで、わかりやすく解説していきます。あなたの投資スタイルに合うかどうか、一緒に考えてみましょう。

貸株サービスって何?まずは基本の仕組みを知ろう

貸株サービスとは、あなたが持っている株を証券会社に貸し出すことで、貸株金利という利息を受け取れるサービスです。まるで株のレンタル屋さんのような仕組みですね。

貸株サービスの仕組み

貸株サービスの流れはとてもシンプルです。

まず、あなたが証券会社に株を貸し出します。証券会社は、あなたから借りた株を機関投資家などに貸し出して、貸株金利を受け取ります。そして、その金利の一部があなたに支払われるという仕組みです。

つまり、証券会社が仲介役となって、あなたの株を必要としている人に貸し出しているわけです。あなたは何もしなくても、持っている株から定期的に収入を得ることができます。

どんな人が貸株を利用しているの?

貸株サービスを利用している人の多くは、長期投資を前提としている投資家です。

数年から数十年にわたって株を保有し続ける予定の人にとって、ただ持っているだけの株から収入を得られるのは魅力的ですよね。特に、成長株や配当株を長期保有している人が多く利用しています。

また、塩漬け状態になってしまった株を有効活用したい人も利用しています。株価が下がって売るに売れない状況でも、貸株金利で少しでも損失を軽減できるからです。

貸株金利はどうやって決まる?

貸株金利は、その株の需要と供給のバランスによって決まります。

多くの人が借りたがる株ほど金利が高くなり、あまり人気のない株は金利が低くなります。証券会社によって異なりますが、年率0.1%から10%程度の幅があります。

金利は毎週見直されることが多く、市場の状況によって変動します。人気の高い銘柄や特殊な事情がある銘柄では、一時的に非常に高い金利がつくこともあります。

貸株サービスの5つのメリット

貸株サービスには、投資家にとって魅力的なメリットがいくつかあります。特に長期投資を考えている人にとっては、見逃せないポイントばかりです。

1. 持っている株でお小遣いが稼げる

貸株サービスの最大のメリットは、何といっても貸株金利を受け取れることです。

例えば、200万円分の株を年率1.0%で貸し出した場合、1年間で2万円の金利を受け取ることができます。これは銀行の普通預金金利と比べると、はるかに高い利回りです。

毎月少しずつでも収入が入ってくるのは、精神的にも嬉しいものです。特に、株価が横ばいで動かない時期でも、着実に収入を得られるのは大きな安心感につながります。

2. 売りたいときはいつでも売れる

「株を貸し出したら、売りたいときに売れなくなるのでは?」と心配する人もいますが、これは誤解です。

貸株サービスを利用していても、売りたいときはいつでも売却できます。売り注文を出すと、自動的に貸株が解除されて、通常の株式売買と同じように取引が成立します。

つまり、貸株サービスを利用していても、投資の自由度は全く変わりません。むしろ、持っているだけで金利がもらえるので、より効率的な投資ができるといえるでしょう。

3. 塩漬け株も有効活用できる

株式投資をしていると、どうしても塩漬け状態になってしまう株が出てきます。

買った価格よりも大幅に下がってしまい、売るに売れない状況の株でも、貸株サービスを利用すれば少しでも収入を得ることができます

完全に諦めて放置するよりも、わずかでも金利を受け取りながら株価の回復を待つ方が、精神的にも楽になります。長期的に見れば、この小さな積み重ねが意外と大きな金額になることもあります。

4. 長期投資との相性がいい

貸株サービスは、特に長期投資との相性が抜群です。

数年から数十年にわたって株を保有し続ける予定なら、その間ずっと貸株金利を受け取ることができます。複利効果も期待できるので、長期間になればなるほど、その恩恵は大きくなります。

また、長期投資では短期的な株価の変動にあまり左右されないため、貸株金利という安定した収入源があることで、より落ち着いて投資を続けることができます。

5. 手続きが簡単で始めやすい

貸株サービスの申し込みは、とても簡単です。

多くの証券会社では、インターネット上で簡単に申し込みができます。特別な書類を用意する必要もなく、数分で手続きが完了します。

また、一度申し込みをすれば、その後は自動的に貸株が開始されます。面倒な管理や手続きは一切不要で、毎月自動的に金利が振り込まれます。

貸株サービスの7つのデメリット・注意点

メリットがある一方で、貸株サービスにはいくつかのデメリットや注意点もあります。これらをしっかりと理解してから利用することが大切です。

1. 株主優待がもらえなくなる

貸株サービスの最も大きなデメリットは、株主優待を受け取れなくなることです。

株を貸し出している間は、株主の名義が証券会社に移るため、株主優待の権利がなくなってしまいます。株主優待を楽しみに投資している人にとっては、これは大きな痛手ですね。

ただし、多くの証券会社では「株主優待優先」という設定があります。これを選択すると、株主優待の権利確定日だけ自動的に貸株が解除されるので、優待を受け取ることができます。

2. 配当金の税金が変わってしまう

貸株サービスを利用すると、配当金の代わりに「配当金相当額」を受け取ることになります。

通常の配当金は配当所得として扱われますが、配当金相当額は雑所得として扱われます。これにより、税金の計算が複雑になる可能性があります。

特に、他の雑所得と合算して年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。税金面での影響をしっかりと理解してから利用することが重要です。

3. 証券会社が倒産したら株が戻らない可能性

貸株サービスには、証券会社の信用リスクがあります。

万が一、証券会社が倒産した場合、貸し出した株が戻ってこない可能性があります。通常の株式投資では投資者保護基金によって保護されますが、貸株については保護の対象外となります。

ただし、大手証券会社が突然倒産する可能性は極めて低いため、過度に心配する必要はありません。それでも、このリスクがあることは理解しておきましょう。

4. 株主総会に参加できない

株を貸し出している間は、株主総会への参加権利もなくなります

企業の経営方針に関心があり、株主総会に積極的に参加したい人にとっては、これはデメリットになります。議決権も行使できないため、企業経営への発言権を失うことになります。

もし株主総会への参加を重視するなら、保有株式の一部だけを貸し出すという方法もあります。

5. 長期保有特典がリセットされる

一部の企業では、長期保有者に対して特別な優待を提供しています。

しかし、貸株サービスを利用すると、長期保有の記録がリセットされてしまう可能性があります。せっかく数年間保有し続けてきた株でも、長期保有特典を受けられなくなってしまうかもしれません。

長期保有特典がある銘柄については、貸株サービスを利用する前に、その影響をしっかりと確認することが大切です。

6. NISAでは使えない

残念ながら、NISA口座で保有している株は貸株サービスの対象外です。

NISAでは株の名義変更が認められていないため、貸株サービスを利用することができません。NISA口座で長期投資をしている人は、この点を理解しておく必要があります。

貸株サービスを利用したい場合は、課税口座(特定口座または一般口座)で株を保有する必要があります。

7. 税務処理が複雑になることも

貸株金利は雑所得として扱われるため、税務処理が複雑になる場合があります

特に、他の雑所得がある人や、貸株金利が高額になった人は、確定申告が必要になる可能性があります。税理士に相談したり、税務ソフトを使ったりする必要が出てくるかもしれません。

税金の計算に自信がない人は、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

貸株サービスのリスクは本当に大きいの?

「貸株サービスはリスクが大きい」という声を聞くことがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。冷静に分析してみましょう。

実際のリスクレベルを冷静に判断

貸株サービスの主なリスクは、証券会社の倒産リスクです。

しかし、大手証券会社が突然倒産する可能性は極めて低いのが現実です。SBI証券や楽天証券などの主要ネット証券は、財務基盤も安定しており、金融庁の厳しい監督下にあります。

むしろ、株式投資そのものの価格変動リスクの方が、はるかに大きいといえるでしょう。貸株サービスのリスクを過度に恐れる必要はありません。

証券会社の信頼性をチェックする方法

それでも心配な人は、証券会社の信頼性をチェックしてみましょう。

自己資本比率純資産額などの財務指標を確認することで、証券会社の健全性を判断できます。また、金融庁のホームページでは、証券会社の業務改善命令や行政処分の履歴も確認できます。

さらに、証券会社の格付けや業界での評判なども参考になります。複数の情報源から総合的に判断することが大切です。

リスクを最小限に抑える使い方

リスクを最小限に抑えるためには、いくつかのポイントがあります。

まず、保有株式の全てを貸し出すのではなく、一部だけを貸し出すという方法があります。これにより、万が一の場合でも損失を限定できます。

また、複数の証券会社に分散して貸株を行うことで、リスクを分散することも可能です。ただし、管理が複雑になるため、バランスを考えることが重要です。

こんな人は貸株サービスを使わない方がいい

貸株サービスは魅力的ですが、すべての人に適しているわけではありません。以下のような人は、利用を控えた方が良いかもしれません。

株主優待目当てで投資している人

株主優待を最優先に考えている人は、貸株サービスの利用を慎重に検討すべきです。

株主優待優先設定があるとはいえ、設定を忘れたり、システムトラブルで優待を受け取れなかったりするリスクがあります。優待を確実に受け取りたいなら、貸株サービスは利用しない方が安全です。

特に、優待利回りが貸株金利よりも高い銘柄では、貸株サービスを利用するメリットがありません。優待の価値と貸株金利を比較して判断することが大切です。

短期売買をメインにしている人

デイトレードやスイングトレードなど、短期売買をメインにしている人にとって、貸株サービスはあまり意味がありません。

短期間で株を売買する場合、貸株金利を受け取る期間が短すぎて、手間に見合うメリットがありません。むしろ、売買のタイミングを逃すリスクの方が大きいかもしれません。

短期売買では、貸株金利よりも売買益を重視した方が効率的です。

税金の計算が面倒に感じる人

確定申告や税金の計算が苦手な人は、貸株サービスの利用を避けた方が良いかもしれません。

貸株金利は雑所得として扱われるため、税務処理が複雑になる可能性があります。特に、他の雑所得がある人は、合算して計算する必要があります。

税金の計算に自信がない人は、税理士に相談するか、シンプルな投資方法を選ぶことをおすすめします。

貸株サービスを上手に使うコツ

貸株サービスを効果的に活用するためには、いくつかのコツがあります。これらを理解して実践することで、より良い結果を得ることができるでしょう。

配当優先設定を活用しよう

多くの証券会社では、配当優先設定というサービスを提供しています。

これは、配当金の権利確定日に自動的に貸株を解除して、配当金を受け取れるようにする設定です。この設定を利用することで、配当金を雑所得ではなく配当所得として受け取ることができます。

税金面でのメリットがあるだけでなく、配当金の受け取りを確実にできるため、積極的に活用することをおすすめします。

金利の高さだけで銘柄を選ばない

貸株金利が高い銘柄は魅力的ですが、金利の高さだけで銘柄を選ぶのは危険です。

金利が異常に高い銘柄は、何らかの特殊事情がある可能性があります。例えば、企業の業績悪化や不祥事などが原因で、空売りが増加している場合があります。

まずは企業の基本的な情報を確認し、なぜ金利が高いのかを理解してから判断することが大切です。

長期保有予定の銘柄で始める

貸株サービスは、長期保有予定の銘柄で始めるのがおすすめです。

短期間で売却する予定の銘柄では、貸株金利を受け取る期間が短く、メリットが少なくなります。一方、数年から数十年保有する予定の銘柄なら、長期間にわたって安定した収入を得ることができます。

また、長期保有予定の銘柄なら、日々の株価変動に一喜一憂することなく、落ち着いて貸株金利を受け取ることができます。

主要証券会社の貸株サービス比較

貸株サービスを提供している主要証券会社の特徴を比較してみましょう。それぞれに特色があるので、自分に合った証券会社を選ぶことが大切です。

SBI証券の貸株サービス

SBI証券は、貸株サービスの充実度で業界トップクラスです。

貸株金利は年率0.10%から10.00%と幅広く、金利1%以上の銘柄も546銘柄と豊富です。配当・優待優先コース、優待優先コース、金利優先コースの3つから選択できるため、投資スタイルに合わせて設定できます。

また、株式売買手数料が無料なので、コストを抑えながら貸株サービスを利用できます。総合的に見て、最もおすすめできる証券会社です。

楽天証券の貸株サービス

楽天証券は、使いやすさと安定性で人気の証券会社です。

貸株金利は年率0.10%から3.75%で、金利1%以上の銘柄は466銘柄あります。金利優先、株主優待優先、株主優待・予想有配優先の3つのコースから選択できます。

2025年3月からはスマートフォンにも対応し、より手軽に貸株サービスを利用できるようになりました。楽天経済圏を活用している人には特におすすめです。

マネックス証券の貸株サービス

マネックス証券は、高金利銘柄が魅力の証券会社です。

貸株金利は年率0.10%から15.00%と、最高金利が他社よりも高く設定されています。ただし、金利1%以上の銘柄は80銘柄と、やや少なめです。

配当金自動取得サービスと株主優待自動取得サービスがあり、権利確定日に自動的に貸株を解除してくれます。高金利を狙いたい人におすすめです。

松井証券の貸株サービス

松井証券は、少額投資家に優しい証券会社として知られています。

貸株金利は年率0.20%から4.00%で、金利1%以上の銘柄は63銘柄です。取引金額50万円以下なら株式売買手数料が無料なので、少額から始めたい人に適しています。

貸株金利優先、株主優待優先、権利取得優先の3つのコースがあり、特に権利取得優先コースでは株主優待と配当金の両方を確実に受け取れます。

貸株を始める前にチェックしたい3つのポイント

貸株サービスを始める前に、必ずチェックしておきたいポイントがあります。これらを確認することで、後悔のない選択ができるでしょう。

自分の投資スタイルに合っているか

まず、自分の投資スタイルに貸株サービスが合っているかを考えてみましょう。

長期投資をメインにしている人なら、貸株サービスは非常に有効です。一方、短期売買をメインにしている人や、株主優待を重視している人には、あまり向いていません。

自分がどのような投資を行いたいのか、どのような利益を求めているのかを明確にしてから判断することが大切です。

税金面での影響を理解しているか

税金面での影響をしっかりと理解しているかも重要なポイントです。

貸株金利は雑所得として扱われるため、他の雑所得と合算して年間20万円を超える場合は確定申告が必要になります。また、配当金相当額は配当所得控除の対象外となります。

税金の計算に自信がない人は、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

証券会社のサービス内容を比較したか

最後に、複数の証券会社のサービス内容を比較したかを確認しましょう。

貸株金利、対象銘柄数、コース設定、手数料など、証券会社によって条件が大きく異なります。自分の投資スタイルや保有銘柄に最も適した証券会社を選ぶことが重要です。

また、将来的に投資スタイルが変わる可能性も考慮して、柔軟性のある証券会社を選ぶことも大切です。

まとめ:貸株サービスは使い方次第でメリットが大きい

今回の記事では、貸株サービスの基本的な仕組みから具体的なメリット・デメリット、そして上手な活用方法まで詳しく解説しました。以下に重要なポイントをまとめます。

  • 貸株サービスは持っている株を貸し出して金利を受け取るサービス
  • 長期投資との相性が良く、塩漬け株も有効活用できる
  • 株主優待がもらえなくなるなどのデメリットもある
  • 証券会社の倒産リスクはあるが、過度に心配する必要はない
  • 税金面での影響を理解してから利用することが大切
  • 自分の投資スタイルに合っているかを慎重に判断する
  • 複数の証券会社のサービス内容を比較して選ぶ

貸株サービスは、使い方次第で投資効率を大幅に向上させることができる優れたサービスです。ただし、メリットだけでなくデメリットもしっかりと理解した上で利用することが重要です。

あなたの投資スタイルや目標に合わせて、貸株サービスを上手に活用してみてください。きっと、より効率的で安定した投資ができるようになるはずです。