【完全ガイド】確定拠出年金iDeCoの始め方!手続き方法・必要書類をFPが解説

iDeCoの始め方について、どこから手をつけていいかわからない。そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

確定拠出年金iDeCoは、老後資金を自分で準備できる制度として注目を集めています。税制優遇を受けながら資産形成ができるため、早めに始めるほどメリットが大きくなります。

この記事では、iDeCoの始め方から必要な手続き、準備すべき書類まで、わかりやすく解説していきます。制度の基本から実際の申込み手順まで、一歩ずつ丁寧にご案内しますので、安心してiDeCoをスタートできるでしょう。

iDeCoって何?まずは基本を知ろう

iDeCoを始める前に、制度の仕組みをしっかり理解しておくことが大切です。

iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、自分で老後資金を準備する私的年金制度のことです。毎月一定の金額を積み立てて、その資金を投資信託や定期預金などで運用していきます。

iDeCoの仕組みをわかりやすく説明

iDeCoの仕組みは、実はとてもシンプルです。

毎月決まった金額を自分の専用口座に積み立てて、その資金を運用商品で増やしていく。これがiDeCoの基本的な流れになります。

積み立てたお金は60歳以降に受け取ることができ、受け取り方法も一括か年金形式かを選べます。運用がうまくいけば、積み立てた金額よりも多くの資金を老後に受け取れる可能性があります。

ただし、運用商品によっては元本割れのリスクもあることを理解しておきましょう。

普通の貯金とiDeCoの違い

普通の貯金とiDeCoには、大きな違いがあります。

最も大きな違いは、税制優遇が受けられることです。普通の貯金では利息に税金がかかりますが、iDeCoでは運用益に税金がかかりません。

また、積み立てた掛金は全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税を減らすことができます。年収400万円の方が月2万円積み立てた場合、年間約4万8000円の税金が安くなる計算です。

一方で、60歳まで引き出せないという制約があります。普通の貯金のように自由に出し入れできないため、計画的な資金管理が必要になります。

iDeCoで得られる3つの税制優遇

iDeCoには3つのタイミングで税制優遇が受けられます。

拠出時の優遇では、積み立てた掛金が全額所得控除の対象となります。年収や掛金額に応じて、所得税と住民税が軽減されます。

運用時の優遇では、運用で得た利益に税金がかかりません。通常の投資では約20%の税金がかかりますが、iDeCoなら運用益をそのまま再投資に回せます。

受取時の優遇では、一括で受け取る場合は退職所得控除、年金形式で受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。受け取り方法を工夫することで、税負担を抑えることができます。

あなたはiDeCoを始められる?加入条件をチェック

iDeCoに加入するには、一定の条件を満たす必要があります。

加入条件は職業や年齢によって決まっており、2025年度の制度改正により条件が緩和される予定です。まずは自分が加入できるかどうかを確認してみましょう。

会社員の場合の加入条件

会社員の方は、基本的にiDeCoに加入できます。

2024年12月の制度改正により、事業主証明書の提出が不要になったため、会社に申請する手間がなくなりました。これまでは勤務先に書類を作成してもらう必要がありましたが、現在はより簡単に加入できるようになっています。

ただし、企業年金の有無によって掛金の上限額が変わります。企業年金がない会社員の場合は月額2万3000円、企業年金がある場合は月額2万円が現在の上限です。

2025年度の税制改正後は、どちらの場合も月額6万2000円まで拠出できるようになる予定です。

公務員・自営業者・専業主婦の場合

公務員の方も2017年からiDeCoに加入できるようになりました。

現在の掛金上限は月額2万円ですが、2025年度の改正後は月額5万4000円まで拠出できる予定です。公務員の方にとっては大幅な拠出額アップとなります。

自営業者やフリーランスの方は、月額6万8000円まで拠出可能です。改正後は月額7万5000円に引き上げられる予定で、最も多く積み立てできる区分となります。

専業主婦(主夫)の方は、月額2万3000円まで拠出できます。この金額は改正後も変更されない予定です。

企業年金がある場合の注意点

企業年金に加入している会社員の方は、特に注意が必要です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している場合、会社の規約でiDeCoへの加入が認められているかを確認する必要があります。規約で禁止されている場合は、iDeCoに加入できません。

確定給付企業年金(DB)に加入している場合は、現在の掛金上限が月額2万円と低く設定されています。ただし、2025年度の改正後は大幅に引き上げられる予定です。

企業年金の種類や会社の規約については、人事部や総務部に確認してみましょう。

iDeCoを始める前に知っておきたい5つのポイント

iDeCoにはメリットだけでなく、注意すべき点もあります。

始める前にデメリットや制約をしっかり理解しておくことで、後悔のない選択ができるでしょう。特に重要な5つのポイントを確認していきます。

60歳まで引き出せないデメリット

iDeCoの最大の制約は、60歳まで資金を引き出せないことです。

急にお金が必要になっても、積み立てた資金は使えません。住宅購入や子どもの教育費など、まとまった支出が予想される場合は、他の貯蓄とのバランスを考える必要があります。

また、転職や収入減少により掛金の支払いが困難になった場合でも、積み立てた資金は引き出せません。掛金の拠出を停止することはできますが、口座管理手数料は継続してかかります。

無理のない範囲で掛金を設定することが、長期継続の秘訣です。

手数料がかかることを理解しよう

iDeCoには様々な手数料がかかります。

加入時には初回手数料として2829円、毎月の口座管理手数料として最低171円がかかります。金融機関によっては、さらに運営管理手数料が上乗せされる場合があります。

運用商品にも信託報酬という手数料がかかり、商品によって0.1%から2%程度と幅があります。手数料が高い商品を選ぶと、運用成果が手数料に食われてしまう可能性があります。

給付時にも手数料がかかるため、トータルコストを考えて金融機関や商品を選ぶことが大切です。

元本割れのリスクもある

投資信託で運用する場合、元本割れのリスクがあります。

市場の変動により、積み立てた金額よりも少ない金額しか受け取れない可能性があります。特に受け取り直前に市場が大きく下落した場合、影響を受けやすくなります。

ただし、長期投資では時間の分散効果により、リスクを軽減できる傾向があります。20年、30年という長期間で考えれば、一時的な下落も回復する可能性が高くなります。

リスクを避けたい場合は、定期預金や保険商品などの元本確保型商品を選ぶこともできます。

転職時の手続きが必要

転職する際は、iDeCoの手続きが必要になります。

転職先に企業年金があるかどうかによって、掛金の上限額が変わる可能性があります。また、転職先の企業型DCに資産を移換する選択肢もあります。

手続きを怠ると、掛金の拠出ができなくなったり、余計な手数料がかかったりする場合があります。転職が決まったら、早めに金融機関に連絡して手続きを確認しましょう。

手続きには時間がかかる場合があるため、転職前から準備しておくことをおすすめします。

受け取り時にも税金がかかる場合がある

iDeCoの受け取り時には、税金がかかる場合があります。

一括受け取りの場合は退職所得として扱われ、退職所得控除を超えた部分に税金がかかります。年金受け取りの場合は雑所得として扱われ、公的年金等控除を超えた部分に税金がかかります。

受け取り方法や受け取り時期を工夫することで、税負担を軽減できる場合があります。退職金の有無や公的年金の受給開始時期なども考慮して、最適な受け取り方法を検討しましょう。

税制は複雑なため、受け取り前に税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

iDeCo始め方の全手順を解説

iDeCoを始めるための具体的な手順をご紹介します。

準備から運用開始まで、段階的に進めていけば迷うことなくスタートできるでしょう。それぞれのステップで重要なポイントを確認していきます。

ステップ1:目的と予算を決める

まずは、なぜiDeCoを始めるのかを明確にしましょう。

老後資金の準備が主な目的になりますが、具体的にいくら必要なのかを考えることが大切です。現在の生活費や将来の生活設計を踏まえて、目標金額を設定してみましょう。

予算については、家計に無理のない範囲で設定することが重要です。住宅ローンや教育費などの支出も考慮して、継続可能な金額を決めましょう。

最低月額5000円から始められるため、まずは少額からスタートして、慣れてきたら増額することも可能です。

ステップ2:金融機関を選ぶ

iDeCoを始めるには、運営管理機関となる金融機関を選ぶ必要があります。

銀行、証券会社、保険会社など、様々な金融機関がiDeCoを取り扱っています。手数料の安さ、商品ラインナップの充実度、サポート体制などを比較して選びましょう。

特に運営管理手数料は金融機関によって大きく異なります。無料の金融機関も多いため、コストを抑えたい場合は手数料無料の機関を選ぶことをおすすめします。

一度選んだ金融機関は変更できますが、手続きが煩雑で手数料もかかるため、慎重に選びましょう。

ステップ3:運用商品を決める

金融機関が提供する運用商品の中から、自分に合った商品を選びます。

大きく分けて、元本確保型(定期預金・保険)と元本変動型(投資信託)があります。リスクを取りたくない場合は元本確保型、リターンを期待したい場合は投資信託を選びましょう。

投資信託を選ぶ場合は、国内株式、海外株式、債券などの資産クラスを組み合わせることで、リスクを分散できます。初心者の方は、複数の資産に分散投資するバランス型ファンドから始めるのがおすすめです。

商品選びに迷った場合は、金融機関のサポートを活用しましょう。

ステップ4:掛金額を設定する

職業に応じた上限額の範囲内で、掛金額を設定します。

会社員の場合、企業年金の有無によって上限が異なります。現在は月額2万円から2万3000円ですが、2025年度の改正後は大幅に引き上げられる予定です。

掛金額は年1回変更できるため、最初は控えめに設定して、慣れてきたら増額することも可能です。ボーナス月に増額するなど、収入に合わせた調整もできます。

税制優遇の効果を最大化したい場合は、可能な範囲で上限まで拠出することをおすすめします。

ステップ5:必要書類を準備する

iDeCoの申込みには、いくつかの書類が必要です。

本人確認書類として、運転免許証やマイナンバーカードなどを用意しましょう。基礎年金番号がわかる年金手帳や基礎年金番号通知書も必要です。

掛金の引き落とし口座として使用する銀行口座の情報も準備しておきましょう。キャッシュカードや通帳で口座番号を確認できます。

2024年12月の制度改正により、会社員や公務員の方も事業主証明書が不要になったため、手続きが簡単になりました。

ステップ6:申込手続きを行う

必要書類が揃ったら、申込手続きを行います。

インターネットで申込む場合と、書面で申込む場合があります。インターネット申込みの方が手続きが早く、書類の郵送も不要なため便利です。

申込み後、加入資格の審査が行われます。審査には1から2か月程度かかる場合があります。審査完了後、口座開設通知書が届き、運用を開始できます。

初回の掛金引き落としまでには、さらに1から2か月程度かかることが一般的です。

会社員がiDeCoを始めるときの必要書類

会社員の方がiDeCoを始める際の書類について、詳しく解説します。

2024年12月の制度改正により手続きが簡素化されましたが、それでも準備すべき書類があります。スムーズに手続きを進めるために、事前に確認しておきましょう。

個人型年金加入申出書の書き方

個人型年金加入申出書は、iDeCoに加入するための基本的な書類です。

氏名、住所、生年月日などの基本情報のほか、掛金額や引き落とし口座、運用商品の配分などを記入します。記入漏れや誤りがあると、手続きが遅れる原因になります。

掛金額は職業区分に応じた上限額の範囲内で設定しましょう。会社員の場合、企業年金の有無によって上限が異なるため、事前に確認が必要です。

運用商品の配分は、後から変更できるため、最初は無理をせず、理解しやすい商品から始めることをおすすめします。

事業主の証明書をもらう方法

2024年12月の制度改正により、事業主証明書の提出が不要になりました。

これまでは勤務先に「事業主の証明書」を作成してもらう必要がありましたが、現在は提出不要となっています。これにより、会社に申請する手間がなくなり、より気軽にiDeCoを始められるようになりました。

ただし、企業年金の有無によって掛金の上限額が変わるため、自分の勤務先にどのような年金制度があるかは確認しておきましょう。

人事部や総務部に問い合わせれば、企業年金の有無について教えてもらえます。

会社への申請で気をつけること

事業主証明書は不要になりましたが、会社への連絡は必要な場合があります。

給与天引きで掛金を拠出したい場合は、会社の協力が必要です。ただし、すべての会社が給与天引きに対応しているわけではないため、事前に確認しましょう。

また、企業型DCに加入している場合は、iDeCoとの同時加入が可能かどうかを確認する必要があります。会社の規約によっては、iDeCoへの加入が制限されている場合があります。

転職時には、新しい勤務先の企業年金制度についても確認が必要です。

金融機関選びで失敗しない方法

iDeCoの成功は、金融機関選びにかかっています。

手数料や商品ラインナップ、サポート体制など、比較すべきポイントがいくつかあります。一度選んだ金融機関は変更が大変なため、慎重に選びましょう。

手数料の安さで選ぶ

手数料は運用成果に直接影響するため、最も重要な選択基準です。

国民年金基金連合会や信託銀行への手数料は、どの金融機関を選んでも同じです。しかし、運営管理手数料は金融機関によって大きく異なります。

多くのネット証券や一部の銀行では、運営管理手数料が無料になっています。年間で数千円の差が生まれるため、長期間では大きな違いになります。

手数料が安い金融機関を選ぶことで、より多くの資金を運用に回すことができます。

商品ラインナップの充実度

運用商品の選択肢が多いほど、自分に合った投資ができます。

株式、債券、REITなど、様々な資産クラスに投資できる商品が揃っているかを確認しましょう。特に信託報酬が低いインデックスファンドが充実している金融機関がおすすめです。

バランス型ファンドやターゲットイヤーファンドなど、初心者向けの商品があることも重要です。これらの商品は、専門知識がなくても分散投資ができます。

定期的に商品ラインナップが見直されているかも、チェックポイントの一つです。

サポート体制の違い

投資初心者の方にとって、サポート体制は重要な要素です。

コールセンターの対応時間や質、ウェブサイトの使いやすさ、セミナーの開催頻度などを比較してみましょう。特に運用商品の選び方や資産配分について、わかりやすく説明してくれるかが重要です。

オンラインでの手続きが充実している金融機関なら、いつでも運用状況を確認できます。スマートフォンアプリが提供されている場合は、より便利に利用できるでしょう。

困ったときに気軽に相談できる体制が整っているかも確認しておきましょう。

おすすめ金融機関3選

手数料の安さと商品ラインナップの充実度を基準に、おすすめの金融機関をご紹介します。

SBI証券は、運営管理手数料が無料で、商品ラインナップも充実しています。低コストのインデックスファンドが豊富に揃っており、投資初心者から上級者まで幅広く対応できます。

楽天証券も運営管理手数料が無料で、楽天ポイントとの連携サービスが魅力です。楽天経済圏を利用している方には特におすすめです。

マネックス証券は、運営管理手数料が無料で、ロボアドバイザーによる資産配分提案サービスがあります。投資初心者の方でも安心して始められるでしょう。

初心者におすすめの運用商品の選び方

運用商品選びは、iDeCoの成果を左右する重要な要素です。

投資初心者の方でも理解しやすいよう、商品の特徴や選び方のポイントを詳しく解説していきます。リスクとリターンのバランスを考えながら、自分に合った商品を見つけましょう。

元本確保型と投資信託の違い

iDeCoの運用商品は、大きく2つに分類されます。

元本確保型は、定期預金や保険商品などで、元本が保証されています。リスクは低いですが、リターンも限定的で、インフレに対応できない可能性があります。

投資信託は、株式や債券などに投資する商品で、元本保証はありませんが、長期的により高いリターンが期待できます。市場の変動により価格が上下するため、短期的には損失が生じる可能性もあります。

iDeCoは長期投資が前提のため、インフレに対応できる投資信託を中心に考えることをおすすめします。

バランス型ファンドから始めよう

投資初心者の方には、バランス型ファンドがおすすめです。

バランス型ファンドは、株式と債券を組み合わせた商品で、一つの商品で分散投資ができます。運用会社が資産配分を調整してくれるため、投資知識がなくても始められます。

国内外の株式と債券に分散投資するタイプが一般的で、リスクとリターンのバランスが取れています。信託報酬も比較的低く設定されている商品が多いです。

慣れてきたら、個別の資産クラスに投資する商品を組み合わせることも可能です。

年齢別おすすめ配分

年齢に応じて、リスク資産の配分を調整することが重要です。

20代から30代の方は、運用期間が長いため、株式の比重を高めることができます。株式70%、債券30%程度の配分から始めてみましょう。

40代から50代の方は、リスクを徐々に下げていく時期です。株式50%から60%、債券40%から50%程度の配分が適切でしょう。

50代後半以降の方は、受け取りが近づくため、債券の比重を高めることを検討しましょう。株式40%、債券60%程度の配分が目安になります。

ただし、これらは一般的な目安であり、個人のリスク許容度に応じて調整することが大切です。

商品選びでよくある失敗例

商品選びでよくある失敗パターンを知っておきましょう。

手数料の高い商品を選ぶことは、最も避けたい失敗です。信託報酬が2%を超えるような商品は、長期投資には不向きです。同じような投資対象でも、手数料の安い商品を選びましょう。

リスクを恐れすぎて元本確保型ばかり選ぶことも、長期的にはマイナスになる可能性があります。インフレを考慮すると、実質的に資産が目減りする恐れがあります。

短期的な値動きに一喜一憂することも避けるべきです。iDeCoは長期投資が前提のため、一時的な下落に動揺せず、継続することが重要です。

掛金額はいくらにすべき?

掛金額の設定は、iDeCoの成果に大きく影響します。

職業別の上限額を理解した上で、家計に無理のない範囲で設定することが重要です。節税効果も考慮しながら、最適な金額を見つけていきましょう。

職業別の掛金上限額

職業によって、拠出できる掛金の上限額が決まっています。

自営業者・フリーランスの方は、現在月額6万8000円まで拠出可能です。2025年度の改正後は月額7万5000円に引き上げられる予定で、最も多く積み立てできる区分となります。

会社員の方は、企業年金の有無によって上限が異なります。企業年金がない場合は月額2万3000円、企業年金がある場合は月額2万円が現在の上限です。改正後はどちらも月額6万2000円まで拠出可能になる予定です。

公務員の方は、現在月額2万円が上限ですが、改正後は月額5万4000円まで拠出できるようになります。

専業主婦(主夫)の方は、月額2万3000円が上限で、改正後も変更されない予定です。

家計に無理のない金額設定

掛金額を決める際は、家計の収支バランスを考慮することが最も重要です。

まず、毎月の収入から必要な生活費を差し引いて、余裕資金がどの程度あるかを把握しましょう。住宅ローンや教育費などの固定支出も忘れずに計算に入れてください。

緊急時の備えとして、生活費の3から6か月分程度は普通預金に残しておくことをおすすめします。その上で、余裕資金の一部をiDeCoに回すという考え方が安全です。

最初は控えめな金額から始めて、慣れてきたら徐々に増額していく方法もあります。

掛金額は後から変更できる

iDeCoの掛金額は、年1回変更することができます。

収入が増えた場合や家計に余裕ができた場合は、掛金を増額することで節税効果を高められます。逆に、収入が減った場合や支出が増えた場合は、掛金を減額することも可能です。

変更手続きは、金融機関に「加入者掛金額変更届」を提出することで行えます。変更の反映には1から2か月程度かかるため、早めに手続きを行いましょう。

一時的に拠出を停止することもできますが、その間も口座管理手数料はかかり続けることに注意が必要です。

節税効果をシミュレーション

掛金額による節税効果を具体的に計算してみましょう。

年収400万円の会社員が月2万円(年24万円)を拠出した場合、所得税率10%、住民税率10%として、年間約4万8000円の税金が安くなります。

年収600万円の方が同じ金額を拠出した場合、所得税率20%のため、年間約7万2000円の節税効果があります。収入が高いほど、節税効果も大きくなります。

2025年度の改正後、会社員の上限額が月6万2000円になった場合、年収600万円の方なら年間約22万3000円の節税効果が期待できます。

ただし、受け取り時には税金がかかる場合があるため、トータルでの税負担を考慮することが重要です。

iDeCo開始後にやるべきこと

iDeCoを始めた後も、定期的なメンテナンスが必要です。

運用状況の確認や商品の見直し、ライフイベントに応じた手続きなど、継続的な管理が運用成果を左右します。長期投資を成功させるためのポイントを確認していきましょう。

年1回の運用状況チェック

iDeCoの運用状況は、最低でも年1回は確認しましょう。

金融機関から送られてくる「運用状況通知書」で、資産残高や運用損益を確認できます。また、インターネットやスマートフォンアプリでも、リアルタイムで運用状況を確認できる場合が多いです。

運用状況をチェックする際は、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な傾向を見ることが大切です。一時的に損失が出ていても、長期投資では回復する可能性があります。

運用商品ごとの成績も確認して、期待通りの運用ができているかを評価しましょう。

商品の見直しタイミング

運用商品の見直しは、定期的に行うことをおすすめします。

年齢の変化に応じて、リスク資産の配分を調整することが重要です。若い頃は株式の比重を高くし、年齢を重ねるにつれて債券の比重を高めていきましょう。

市場環境の変化により、商品の魅力度が変わることもあります。信託報酬がより安い商品が新たに追加された場合は、乗り換えを検討してみましょう。

ライフスタイルの変化も見直しのきっかけになります。結婚や出産、住宅購入などにより、リスク許容度が変わる場合があります。

ただし、頻繁な変更は手数料がかかる場合があるため、慎重に判断しましょう。

転職時の手続き方法

転職する際は、iDeCoの手続きが必要になります。

まず、転職先に企業年金制度があるかどうかを確認しましょう。企業年金の有無によって、掛金の上限額が変わる可能性があります。

企業型DCがある会社に転職した場合、iDeCoの資産を企業型DCに移換することも可能です。ただし、移換には手数料がかかる場合があるため、メリット・デメリットを比較して判断しましょう。

手続きには時間がかかるため、転職が決まったら早めに金融機関に連絡することをおすすめします。

受け取り方法を考えておく

60歳が近づいてきたら、受け取り方法を検討しましょう。

一括受け取りの場合は、退職所得として扱われ、退職所得控除が適用されます。まとまった金額を一度に受け取れるため、住宅ローンの返済や大きな支出に充てることができます。

年金受け取りの場合は、雑所得として扱われ、公的年金等控除が適用されます。毎年一定額を受け取れるため、生活費の補填に適しています。

併用受け取りも可能で、一部を一括で受け取り、残りを年金形式で受け取ることもできます。税制面でのメリットを最大化するため、受け取り前に専門家に相談することをおすすめします。

iDeCoでよくある質問と解決方法

iDeCoを始める際に、多くの方が疑問に思うポイントがあります。

実際によくある質問と、その解決方法をご紹介します。不安や疑問を解消して、安心してiDeCoを始めましょう。

申込から開始まで何ヶ月かかる?

iDeCoの申込みから運用開始まで、通常2から3か月程度かかります。

申込み後、国民年金基金連合会で加入資格の審査が行われます。この審査には1から2か月程度かかることが一般的です。審査完了後、口座開設通知書が届きます。

初回の掛金引き落としは、口座開設から1から2か月後になります。そのため、申込みから実際に運用が始まるまでには、合計で2から3か月程度を見込んでおきましょう。

書類に不備があると、さらに時間がかかる場合があるため、申込み前に必要書類をしっかり確認することが重要です。

途中で掛金を止められる?

iDeCoの掛金拠出は、途中で停止することができます。

「加入者資格喪失届」を提出することで、掛金の拠出を停止できます。ただし、拠出を停止しても口座は維持され、口座管理手数料は継続してかかります。

拠出を停止した場合、運用指図者という立場になり、それまでに積み立てた資産の運用は継続されます。運用商品の変更も可能です。

収入が回復した場合は、再度掛金の拠出を開始することもできます。ただし、再開には手続きが必要で、時間もかかります。

運用商品は変更できる?

運用商品の変更は、いつでも可能です。

配分変更は、今後拠出する掛金の投資先を変更することです。手数料はかからず、インターネットで簡単に手続きできます。

スイッチングは、すでに運用している資産を他の商品に移し替えることです。一部の金融機関では手数料がかかる場合があります。

ただし、頻繁な変更は投資効率を下げる可能性があるため、慎重に判断しましょう。市場の短期的な変動に惑わされず、長期的な視点で商品を選ぶことが重要です。

転職したらどうなる?

転職してもiDeCoは継続できますが、手続きが必要です。

転職先の企業年金制度によって、掛金の上限額が変わる可能性があります。企業年金がない会社から企業年金がある会社に転職した場合、掛金額の変更が必要になる場合があります。

転職先に企業型DCがある場合、iDeCoの資産を企業型DCに移換することも可能です。ただし、移換には手数料がかかる場合があるため、メリット・デメリットを比較して判断しましょう。

手続きを怠ると、掛金の拠出ができなくなったり、余計な手数料がかかったりする場合があるため、転職が決まったら早めに金融機関に連絡しましょう。

まとめ:iDeCoで老後資金を賢く準備しよう

今回の記事では、iDeCoの始め方について詳しく解説してきました。以下に重要なポイントをまとめます。

  • iDeCoは税制優遇を受けながら老後資金を準備できる制度
  • 2025年度の改正で掛金上限額が大幅に引き上げられる予定
  • 事業主証明書が不要になり手続きが簡素化された
  • 金融機関選びでは手数料の安さと商品ラインナップを重視する
  • 運用商品は初心者にはバランス型ファンドがおすすめ
  • 掛金額は家計に無理のない範囲で設定し年1回変更可能
  • 60歳まで引き出せないデメリットを理解して始める

iDeCoは長期投資が前提の制度のため、早く始めるほど複利効果を活用できます。制度改正により条件が改善される今が、始めるのに良いタイミングかもしれません。

まずは少額からでも構いませんので、将来の安心のためにiDeCoを検討してみてください。不明な点があれば、金融機関のサポートを活用しながら、自分に合った運用方法を見つけていきましょう。