厚かましいの意味は?厚かましい人の心理や類語・失礼にならない使い方を解説

「厚かましい」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かびますか?多くの人は「図々しい人」や「遠慮のない人」を思い浮かべるでしょう。

実は「厚かましい」には、単なる悪口以外にも、ビジネスシーンで相手への配慮を示す使い方があります。また、厚かましい人の心理を理解することで、そうした人との付き合い方も見えてきます。

この記事では、厚かましいの正しい意味から、厚かましい人の特徴や心理、類語との違い、そして失礼にならない使い方まで詳しく解説します。言葉の使い方を知ることで、コミュニケーションがもっとスムーズになるはずです。

「厚かましい」の基本的な意味とは?

厚かましいという言葉の本来の意味を正しく理解することから始めましょう。辞書的な意味だけでなく、語源や地域による違いも知っておくと、より深く理解できます。

辞書的な意味と語源

厚かましいは「言動に慎みがなく、ずうずうしい」という意味の形容詞です。他人に迷惑をかけていることを理解しながらも、恥じることなく図々しい態度を取る様子を表します。

語源には諸説ありますが、最も有力なのは「面の皮が厚い」が変化したという説です。恥知らずな人を「面の皮が厚い」と表現することから、「厚皮(あつかわ)」が「厚かましい」に変化したと考えられています。

また、「厚い」と古語の「かまし(やかましい)」が組み合わさって生まれたという説もあります。どちらにしても、度を超えた図々しさを表現する言葉として使われてきました。

「図々しい」との微妙な違い

厚かましいと図々しいは、どちらも似たような意味で使われますが、微妙な違いがあります。

図々しいは「自分勝手で他人への迷惑を気にしない態度」を表し、より自己中心的なニュアンスが強い言葉です。一方、厚かましいは「恥じる気持ちや遠慮がない」ことを表し、図々しいよりもやや改まった表現とされています。

日常会話では図々しいの方がよく使われ、ビジネスシーンでは厚かましいが選ばれることが多いのも特徴です。

地域による方言としての意味

実は「厚かましい」は、地域によって標準語とは異なる意味で使われています。

兵庫県では「忙しい」「騒々しい」という意味で使われ、愛媛県では「うるさくてやかましい」という意味で親しまれています。京都や岡山、徳島、香川などでも「騒々しい」という意味で使われることがあります。

同じ音の言葉でも地域によって全く違う意味になるため、方言として使われている地域では注意が必要です。

厚かましい人に見られる5つの特徴

厚かましい人には共通する行動パターンがあります。これらの特徴を知ることで、そうした人を見分けたり、自分が同じような行動を取らないよう気をつけたりできます。

1. 他人への迷惑を気にしない

厚かましい人の最も大きな特徴は、自分の行動が他人にどんな影響を与えるかを考えないことです。

例えば、電車で席を取るために列に並んでいる人を押しのけて座ったり、サウナで場所取りをしたりといった行動を平然と行います。周りの人がどう思うかよりも、自分の都合を優先してしまうのです。

普通の人なら「これをしたら迷惑かな」と考えて控える行動でも、厚かましい人は躊躇なく実行してしまいます。

2. 損得勘定で行動を決める

厚かましい人は、一見大雑把に見えても実は損得勘定に長けています。

自分にとって得になる場面では積極的に参加しますが、損になりそうな場面では巧妙に避けようとします。例えば、誰かに奢ってもらえる食事会には必ず参加するのに、自分が支払う可能性がある集まりには顔を出しません。

また、お礼やお返しについても無頓着で、「ラッキー」程度にしか考えていないことが多いのです。

3. 空気を読むのが苦手

厚かましい人は、その場の雰囲気や相手の気持ちを察するのが苦手です。

本来なら空気を読んで控えるべき発言や行動を、躊躇なく行ってしまいます。周囲が困惑していても気づかず、自分のペースで話し続けたり行動したりしてしまうのです。

協調性に欠けるため、チームワークが必要な場面では特に問題になりがちです。

4. 努力を避けて楽をしたがる

厚かましい人は、地道な努力を嫌う傾向があります。

コツコツと積み重ねる作業は他人に任せて、自分は目立つ仕事や楽な仕事を選ぼうとします。しかも、チームで成功した場合には、自分の手柄のように振る舞うことも少なくありません。

他人の努力に対する感謝の気持ちも薄く、当然のことだと考えてしまいがちです。

5. 感謝の気持ちが薄い

厚かましい人は、他人から受けた親切や助けに対して感謝の気持ちを持ちにくい特徴があります。

何かをしてもらっても「当たり前」だと思ってしまい、お礼を言うことを忘れがちです。また、相手が困っているときに助けようという気持ちも薄く、自分のことで精一杯になってしまいます。

この特徴が、周囲の人から敬遠される大きな理由の一つになっています。

厚かましい人の心理を深掘り

厚かましい人がなぜそのような行動を取るのか、その心理的な背景を理解することで、より適切な対応ができるようになります。

自己中心的な思考パターン

厚かましい人の根底にあるのは、自己中心的な思考パターンです。

物事を判断するとき、まず自分にとってどうなのかを考え、他人の立場や気持ちは二の次になってしまいます。これは意図的に他人を軽視しているわけではなく、単純に他人の視点で考える習慣がないのです。

子どもの頃から自分の要求が通りやすい環境で育ったり、周囲が甘やかしてくれたりした経験が影響していることもあります。

承認欲求の強さが影響している

厚かましい人の中には、強い承認欲求を持つ人も多くいます。

注目されたい、認められたいという気持ちが強すぎて、周囲への配慮を忘れてしまうのです。目立つためなら多少図々しい行動も辞さないという心理が働いています。

この場合、厚かましい行動は承認欲求を満たすための手段として使われているのです。

罪悪感を感じにくい性格

厚かましい人は、自分の行動に対して罪悪感を感じにくい性格の持ち主です。

普通の人なら「これは迷惑かもしれない」と感じる場面でも、罪悪感を覚えることが少ないため、躊躇なく行動してしまいます。これは生まれ持った性格の場合もあれば、環境によって形成された場合もあります。

罪悪感を感じにくいため、同じような行動を繰り返してしまう傾向があります。

他人との境界線が曖昧

厚かましい人は、自分と他人の境界線を適切に認識できていないことがあります。

他人の時間や労力、所有物に対する認識が甘く、「ちょっとくらいなら大丈夫」という感覚で行動してしまいます。この境界線の曖昧さが、結果的に厚かましい行動につながってしまうのです。

適切な距離感を保つことの大切さを理解していないため、相手が困惑していても気づかないことが多いのです。

「厚かましい」の類語と使い分け

厚かましいと似た意味を持つ言葉がいくつかあります。それぞれの微妙な違いを理解することで、より適切な表現を選べるようになります。

図々しい(ずうずうしい)

図々しいは、厚かましいと最も近い意味を持つ言葉です。

「自分勝手で他人への迷惑を気にしない態度」を表し、厚かましいよりも自己中心的なニュアンスが強くなります。日常会話でよく使われ、カジュアルな場面に適しています。

ビジネスシーンでは厚かましいの方が適切とされることが多いです。

おこがましい

おこがましいは「身の程をわきまえない」「分不相応である」という意味を持ちます。

自分の立場や能力を超えた行動を取ることを表し、目上の人に意見するときなどに使われます。厚かましいが「遠慮がない」ことを表すのに対し、おこがましいは「身の程知らず」というニュアンスです。

「おこがましいことを申し上げますが」のように、謙遜表現としても使われます。

僭越(せんえつ)

僭越は「自分の地位や立場にあるまじき、出過ぎた言動をとること」を意味します。

あいさつやスピーチでよく使われる「僭越ながら」という表現は、「身分や権限を越えて行う」というニュアンスを含んでいます。厚かましいよりもフォーマルで、敬語表現として使われることが多いです。

ビジネスシーンでの謙虚さを示したい場合に適しています。

無遠慮

無遠慮は「思慮のないこと」「無作法、不謹慎」という意味を持ちます。

相手への配慮を欠いた行動や発言を表し、厚かましいと似た場面で使われます。ただし、無遠慮の方がより直接的で、相手への批判的なニュアンスが強くなります。

「無遠慮な質問」「無遠慮な態度」のように使われることが多いです。

恥知らず

恥知らずは「恥を恥とも思わない」「厚顔無恥」という意味の言葉です。

厚かましいよりもさらに強い批判的なニュアンスを持ち、相手を非難する際に使われます。日常会話では使われることが多いですが、ビジネスシーンでは避けた方が良い表現です。

感情的な場面で使われることが多く、冷静な議論には適していません。

ビジネスシーンで失礼にならない「厚かましい」の使い方

厚かましいという言葉は、使い方次第でビジネスシーンでも有効な表現になります。自分の行動をへりくだって表現することで、相手への配慮を示すことができるのです。

謙遜表現として使う基本パターン

ビジネスシーンでは、「厚かましいお願いですが」という形で謙遜表現として使います。

この表現を使うことで、「図々しいお願いとは承知していますが」という気持ちを伝えることができます。相手に負担をかける可能性を理解していることを示し、丁寧な印象を与える効果があります。

特に、急な依頼や特別な配慮が必要な場面で効果的です。

メールでの適切な使い方

メールでの厚かましいの使い方には、いくつかのパターンがあります。

依頼をするとき

「厚かましいお願いとなり恐縮ですが、本日中に資料をご確認いただけると幸いです」のように、相手の時間を奪うことへの申し訳なさを表現できます。

「厚かましいお願いで大変恐縮ではございますが、見積書の提出期限を3日ほど延長していただけませんでしょうか」のように、こちらの都合を優先してもらう場合にも使えます。

お願いを断るとき

「厚かましいお願いで申し訳ございませんが、弊社の規定ではこのようになっております」のように、相手の要望に応えられない場合の表現としても使えます。

感謝を伝えるとき

「厚かましい希望にも関わらずお引き受けいただき、感謝申し上げます」のように、相手が自分の依頼を受け入れてくれたことへの感謝を表現する際にも使えます。

使いすぎると逆効果になる注意点

厚かましいという表現は効果的ですが、使いすぎると逆効果になることがあります。

毎回同じ表現を使っていると、相手に「本当に申し訳ないと思っているのか」という疑問を持たれてしまいます。また、あまりにも頻繁に使うと、かえって図々しい印象を与えてしまう可能性もあります。

本当に相手に負担をかける場面や、特別な配慮が必要な場面に限定して使うことが大切です。

厚かましい人への上手な対処法4選

厚かましい人と関わらなければならない場面では、適切な対処法を知っておくことが重要です。感情的にならず、冷静に対応することがポイントです。

1. 適度な距離を保つ

厚かましい人への最も基本的な対処法は、適度な距離を保つことです。

深い関係になればなるほど、相手の厚かましい行動に巻き込まれる可能性が高くなります。必要最小限の関わりに留めて、プライベートな話題は避けるようにしましょう。

職場などで完全に関わりを断つことができない場合でも、仕事以外の付き合いは控えることで、被害を最小限に抑えることができます。

2. はっきりと断る勇気を持つ

厚かましい人は、曖昧な返事を「OK」と解釈してしまう傾向があります。

嫌なことを頼まれたときは、はっきりと「NO」と言う勇気を持つことが大切です。「ちょっと難しいです」「検討してみます」といった曖昧な表現では、相手に期待を持たせてしまいます。

「申し訳ありませんが、お受けできません」のように、明確に断ることで、相手も諦めやすくなります。

3. 具体的な質問で相手を困らせる

厚かましい人が理不尽な依頼をしてきた場合は、具体的な質問をすることで対処できます。

「具体的にはどのような作業が必要でしょうか」「期限はいつまででしょうか」「予算はどの程度を想定されていますか」のように、詳細を尋ねることで、相手に面倒さを感じさせることができます。

厚かましい人は面倒なことを嫌がる傾向があるため、この方法で諦めてもらえることが多いです。

4. こちらからもお願いを返す

厚かましい人から何かを頼まれたら、逆にこちらからもお願いを返してみましょう。

「それでしたら、こちらもお願いがあるのですが」「じゃあその代わり、これをお願いできますか」のように、相手にも負担をかけることで、バランスを取ることができます。

厚かましい人は自分が損をすることを嫌がるため、この方法で距離を置いてもらえることが多いです。

自分が厚かましくならないための心がけ

自分自身が厚かましい人にならないためには、日頃から意識すべきポイントがあります。これらを心がけることで、周囲の人との良好な関係を築くことができます。

相手の立場に立って考える習慣

何かを依頼したり行動したりする前に、相手の立場に立って考える習慣を身につけましょう。

「この依頼は相手にとって負担になるだろうか」「今は忙しい時期かもしれない」「この行動は迷惑をかけるかもしれない」といったことを考えてから行動することが大切です。

相手の都合や気持ちを想像する力を鍛えることで、厚かましい行動を避けることができます。

感謝の気持ちを言葉にする

何かをしてもらったときは、必ず感謝の気持ちを言葉にして伝えましょう。

「ありがとうございます」「助かりました」「恐縮です」といった言葉を素直に伝えることで、相手との関係を良好に保つことができます。また、後日改めてお礼を伝えることも効果的です。

感謝の気持ちを表現することで、相手も気持ちよく協力してくれるようになります。

「お互い様」の精神を大切にする

人間関係では「お互い様」の精神が重要です。

自分が助けてもらったときは、相手が困っているときに恩返しをする気持ちを持ちましょう。一方的に助けてもらうだけでなく、自分も相手の役に立てるよう心がけることが大切です。

この精神があることで、厚かましい人だと思われることを避けることができます。

断られても受け入れる姿勢

お願いをして断られたときは、素直に受け入れる姿勢を持ちましょう。

「忙しいのに無理を言ってすみませんでした」「また機会があるときにお願いします」といった言葉で、相手への理解を示すことが大切です。断られたからといって不機嫌になったり、しつこく頼んだりしてはいけません。

相手の都合を尊重する姿勢を示すことで、今後も良好な関係を維持することができます。

よくある厚かましい行動の実例

実際にどのような行動が厚かましいと感じられるのか、具体的な例を知っておくことで、自分の行動を振り返ることができます。

職場でのケース

職場でよく見られる厚かましい行動には、以下のようなものがあります。

他人の仕事を当然のように頼んでおきながら、お礼を言わない人がいます。また、チームで達成した成果を自分一人の手柄のように話す人も、厚かましいと感じられがちです。

会議で他人のアイデアを自分のもののように発表したり、残業を他人に押し付けて自分は定時で帰ったりする行動も、周囲から厚かましいと思われる原因になります。

プライベートでのケース

プライベートでの厚かましい行動も様々です。

友人の家に遊びに行ったときに、断りなく冷蔵庫を開けたり、勝手に物を使ったりする行動は典型的な例です。また、いつも奢ってもらうばかりで、自分は支払いを避ける人も厚かましいと感じられます。

合コンで知り合った程度の関係なのに、馴れ馴れしく接したり、相手の都合を考えずに連絡を取ったりする行動も問題になりがちです。

SNSやオンラインでのケース

最近では、SNSやオンラインでの厚かましい行動も増えています。

知り合い程度の関係なのに、プライベートな質問を次々と投げかけたり、相手の投稿に対して批判的なコメントを繰り返したりする行動は厚かましいと感じられます。

また、オンラインゲームやサウナなどの共用スペースで、ルールを無視して場所取りをしたり、他の利用者に迷惑をかけたりする行動も問題になっています。

まとめ

厚かましいという言葉は、単なる悪口ではなく、使い方次第でビジネスシーンでも有効な表現になることがわかりました。

厚かましい人の特徴や心理を理解することで、そうした人との適切な付き合い方も見えてきます。自己中心的な思考パターンや承認欲求の強さ、罪悪感を感じにくい性格などが、厚かましい行動の背景にあることが多いのです。

また、図々しい、おこがましい、僭越、無遠慮、恥知らずといった類語との違いを理解することで、場面に応じた適切な表現を選ぶことができます。

自分が厚かましい人にならないためには、相手の立場に立って考える習慣を身につけ、感謝の気持ちを言葉にし、お互い様の精神を大切にすることが重要です。断られても素直に受け入れる姿勢を持つことで、周囲の人との良好な関係を築くことができるでしょう。

言葉の正しい意味と使い方を知ることで、より豊かなコミュニケーションを楽しんでください。