共働き夫婦の子供はどちらの扶養にすべき?制度の仕組みから導くお得な考え方

共働きで子育てをしていると、ふと疑問に思うことがありませんか。「子供の扶養って、夫と妻のどちらに入れるのがいいんだろう」と。

実は、この選択によって家計の手取り額が大きく変わることがあります。扶養には税法上と社会保険上の2つがあり、それぞれ異なるルールで運用されているからです。

2025年からは103万円の壁が123万円に引き上げられるなど、制度も変わりつつあります。正しい知識を身につけて、我が家にとって最もお得な選択をしたいものです。

この記事では、共働き夫婦が子供の扶養を決める際に知っておきたいポイントを、具体的なシミュレーションとともにお伝えします。制度の仕組みから実際の手続き方法まで、わかりやすく解説していきますね。

そもそも扶養ってなに?基本の仕組みを知ろう

扶養制度について理解するために、まず基本的な仕組みを整理しておきましょう。

扶養には大きく分けて2つの種類があります。

  • 税法上の扶養(所得税・住民税の控除を受けるため)
  • 社会保険上の扶養(健康保険料や年金保険料の負担軽減のため)

この2つは目的も条件も異なるため、それぞれ詳しく見ていきます。

税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い

税法上の扶養は、主に所得税や住民税の負担を軽くするための制度です。扶養親族がいることで、扶養する人の課税所得から一定額が控除され、結果的に税金が安くなります。

一方、社会保険上の扶養は医療費の負担を軽減するための制度です。健康保険の被保険者が家族を扶養に入れることで、扶養される側は保険料を払わずに医療サービスを受けられます。

この2つの扶養は、必ずしも同じ人に入れる必要はありません。税法上は夫の扶養、社会保険上は妻の扶養といった分け方も可能です。

扶養に入れることで得られるメリット

扶養に入れることで得られるメリットは、扶養の種類によって異なります。

税法上の扶養では、扶養控除により所得税と住民税が軽減されます。16歳以上の子供なら年間38万円、19歳から23歳未満の大学生年代なら63万円の控除が受けられます。

社会保険上の扶養では、扶養される側の健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。年収130万円未満なら、追加の保険料負担なしで医療サービスを受けられるのです。

共働き夫婦が知っておきたい扶養の判断基準

共働き夫婦が子供の扶養を決める際には、いくつかの重要な判断基準があります。

扶養の判断で押さえておきたいポイントは次のとおりです。

  • 年収の高い方を基本とする原則
  • 社会保険の年収130万円ルール
  • 税法上の所得制限の存在

それぞれ詳しく説明します。

年収の高い方に入れるのが基本ルール

社会保険上の扶養では、2021年8月から新しいルールが適用されています。夫婦の年収差が1割を超える場合は、年収の高い方が扶養者となります。

たとえば、夫の年収が500万円で妻の年収が440万円の場合、差額は60万円です。これは夫の年収の1割である50万円を超えるため、年収の多い夫が扶養者となります。

一方、年収差が1割以内の場合は、主として生計を維持している方が扶養者になれます。届出により、年収が少し低い方でも扶養者となることが可能です。

社会保険の扶養認定で重要な「年収130万円の壁」

社会保険の扶養認定では、被扶養者の年収が130万円未満であることが条件です。この金額を超えると、自分で国民年金や国民健康保険に加入する必要があります。

130万円の壁を超えると、手取り収入が大幅に減ってしまうことがあります。パートで働く配偶者がいる場合は、この点を特に注意深く検討する必要があります。

ただし、子供の場合は通常この条件に該当しないため、主に配偶者の扶養を考える際の基準となります。

税法上の扶養控除における所得制限

税法上の扶養控除には、扶養する側の所得制限があります。合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除や配偶者特別控除は受けられません。

2025年からは、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられ、給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に拡充されます。これにより、103万円の壁が123万円の壁に変わります。

子供の扶養控除については、16歳未満は対象外ですが、16歳以上なら年間38万円、19歳から23歳未満なら63万円の控除が受けられます。

どちらの扶養に入れるとお得?具体的な比較方法

子供をどちらの扶養に入れるかを決める際は、具体的な金額で比較することが大切です。

扶養の選択で比較すべき要素は以下のとおりです。

  • 夫婦それぞれの年収と税率
  • 扶養控除による節税効果の違い
  • 児童手当の所得制限への影響

順番に詳しく見ていきましょう。

夫婦の年収差で変わる節税効果

扶養控除による節税効果は、扶養する人の税率によって決まります。年収が高いほど税率も高くなるため、一般的には年収の高い方の扶養に入れる方がお得です。

たとえば、夫の年収が500万円(所得税率20%)、妻の年収が120万円(所得税率5%)の場合を考えてみましょう。17歳の子供を扶養に入れると、特定扶養控除63万円が適用されます。

夫の扶養に入れた場合の節税効果は、所得税で約12万6千円、住民税で約6万3千円の合計約18万9千円です。妻の扶養に入れた場合は、所得税がほとんどかからないため、節税効果は住民税の約6万3千円程度にとどまります。

社会保険料の負担軽減額を計算してみよう

社会保険上の扶養では、扶養される側の保険料負担がなくなります。ただし、子供の場合は通常収入がないため、この点での差はあまりありません。

むしろ重要なのは、配偶者がパートで働いている場合です。年収130万円未満なら社会保険の扶養に入れますが、これを超えると月額2万円程度の保険料負担が発生することがあります。

子供の扶養を考える際は、主に税法上の扶養控除による節税効果を重視して判断するのが一般的です。

児童手当の所得制限も考慮に入れる

児童手当には所得制限があり、2024年10月からは所得制限が撤廃されました。以前は年収が高すぎると児童手当が減額されたり、支給停止になったりしていました。

現在は所得制限がないため、児童手当の観点から扶養を選択する必要はありません。ただし、今後制度が変更される可能性もあるため、最新の情報を確認しておくことが大切です。

扶養の選択は、主に税法上の扶養控除による節税効果を基準に判断すればよいでしょう。

共働き夫婦がやりがちな扶養の間違い3つ

共働き夫婦が扶養について判断する際、よくある間違いを3つご紹介します。

何となく夫の扶養に入れてしまう

「扶養といえば夫」という固定観念から、深く考えずに夫の扶養に入れてしまうケースがあります。しかし、妻の年収が高い場合や、夫の所得が1,000万円を超える場合は、妻の扶養に入れた方がお得になることがあります。

特に共働きが当たり前になった現在では、妻の年収が夫を上回る家庭も珍しくありません。年収を比較して、より節税効果の高い方を選択することが大切です。

年収が逆転したのに扶養を変更していない

結婚当初は夫の年収が高かったものの、昇進や転職により妻の年収が上回るようになったケースです。このような場合、扶養を変更することで節税効果を高められる可能性があります。

扶養の変更は年末調整や確定申告の際に行えます。年収の変化に応じて、定期的に見直しを行うことをおすすめします。

社会保険と税法で別々の扶養にしている

税法上の扶養と社会保険上の扶養は別々に考えることができますが、手続きが複雑になりがちです。特別な理由がない限り、同じ人の扶養に入れる方が管理しやすいでしょう。

ただし、夫婦の年収や働き方によっては、分けた方がお得になるケースもあります。専門家に相談して、最適な選択を検討してみてください。

年収別シミュレーション:我が家はどちらがお得?

具体的な年収パターンで、どちらの扶養に入れるとお得かシミュレーションしてみましょう。

夫500万円・妻300万円の場合

この場合、夫の所得税率は20%、妻の所得税率は10%程度です。17歳の子供を扶養に入れる場合の特定扶養控除63万円を比較してみます。

夫の扶養に入れた場合、所得税で約12万6千円、住民税で約6万3千円の合計約18万9千円の節税効果があります。妻の扶養に入れた場合は、所得税で約6万3千円、住民税で約6万3千円の合計約12万6千円です。

この場合、夫の扶養に入れる方が約6万3千円お得になります。

夫400万円・妻450万円の場合

妻の年収が夫を上回るケースです。夫の所得税率は10%、妻の所得税率は20%程度になります。

同じく17歳の子供の特定扶養控除63万円で比較すると、妻の扶養に入れた場合の節税効果が約18万9千円、夫の扶養に入れた場合が約12万6千円となります。

この場合は、妻の扶養に入れる方が約6万3千円お得です。

夫600万円・妻200万円の場合

年収差が大きいケースです。夫の所得税率は20%、妻の所得税率は5%程度になります。

夫の扶養に入れた場合の節税効果は約18万9千円、妻の扶養に入れた場合は約6万3千円程度です。この場合、夫の扶養に入れる方が約12万6千円もお得になります。

年収差が大きいほど、高年収の方の扶養に入れるメリットが大きくなることがわかります。

扶養を変更するタイミングと手続き方法

扶養の変更を検討する際のタイミングと、具体的な手続き方法について説明します。

いつから変更できる?最適なタイミング

税法上の扶養は、基本的に1年間を通じて判断されます。年の途中で変更することも可能ですが、年末調整や確定申告の際にまとめて手続きするのが一般的です。

最適なタイミングは以下のとおりです。

  • 年末調整の時期(11月〜12月)
  • 確定申告の時期(2月〜3月)
  • 夫婦の年収が大きく変わったとき

社会保険上の扶養は、収入の変化があった時点で速やかに変更手続きを行う必要があります。

会社への届出で必要な書類

会社員の場合、年末調整で扶養控除等申告書を提出します。この書類に扶養親族の情報を記載することで、扶養の変更ができます。

必要な書類は以下のとおりです。

  • 扶養控除等申告書
  • 扶養親族の所得を証明する書類(必要に応じて)
  • マイナンバーカードまたは通知カード

社会保険の扶養変更では、健康保険被扶養者異動届などの提出が必要です。

税務署での手続きが必要なケース

自営業者や、会社で年末調整を受けていない場合は、確定申告で扶養控除の手続きを行います。

確定申告書に扶養親族の情報を記載し、控除額を計算して申告します。必要に応じて、扶養親族の所得証明書類も添付します。

過去の年分について扶養を変更したい場合は、更正の請求という手続きで税金の還付を受けることも可能です。

共働き夫婦が見落としがちな扶養以外の節税対策

扶養控除以外にも、共働き夫婦が活用できる節税対策があります。

配偶者控除・配偶者特別控除の活用

2025年からは、配偶者控除の適用範囲が拡大されます。配偶者の年収が123万円以下なら配偶者控除、160万円以下なら配偶者特別控除が受けられるようになります。

パートで働く配偶者がいる場合は、これらの控除を最大限活用できるよう働き方を調整することも検討してみてください。

ただし、収入を抑えすぎると世帯全体の手取りが減ってしまうこともあるため、バランスを考えることが大切です。

iDeCoやふるさと納税との組み合わせ

iDeCo(個人型確定拠出年金)やふるさと納税も、有効な節税対策です。これらを扶養控除と組み合わせることで、さらに節税効果を高められます。

iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税です。ふるさと納税は実質2,000円の負担で返礼品がもらえる制度です。

ただし、これらの制度には年収に応じた上限があるため、事前に確認しておきましょう。

医療費控除は合算して申告する

家族の医療費は合算して医療費控除を受けることができます。年間10万円を超える医療費があれば、所得控除の対象となります。

共働き夫婦の場合、年収の高い方で医療費控除を申告する方が節税効果は高くなります。家族全員の医療費をまとめて管理し、確定申告で控除を受けましょう。

将来を見据えた扶養の考え方

扶養の選択は、現在だけでなく将来の変化も考慮して決めることが大切です。

妻の働き方が変わったときの対応

妻がパートから正社員になったり、逆に仕事を辞めたりする場合、扶養の最適解も変わります。働き方の変化に応じて、扶養の見直しを行いましょう。

特に、妻の年収が大幅に増加する場合は、子供の扶養を妻に変更することで節税効果を高められる可能性があります。

定期的に夫婦の年収を比較し、必要に応じて扶養の変更を検討してください。

第二子以降の扶養はどうする?

子供が複数いる場合、全員を同じ人の扶養に入れる必要はありません。年収の高い方に集中させるのが基本ですが、所得制限に引っかかる場合は分散させることも考えられます。

たとえば、夫の年収が非常に高く、将来的に配偶者控除の所得制限に引っかかる可能性がある場合、一部の子供を妻の扶養に入れることも選択肢の一つです。

離婚や転職時の扶養変更

離婚や転職など、家族構成や収入状況が大きく変わる場合は、速やかに扶養の変更手続きを行う必要があります。

特に社会保険の扶養は、被保険者の変更があった場合、新しい保険に加入するまでの間に空白期間が生じないよう注意が必要です。

事前に必要な手続きを確認し、スムーズに移行できるよう準備しておきましょう。

まとめ

今回の記事では、共働き夫婦の子供の扶養について、制度の仕組みから具体的な選択方法まで詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。

  • 扶養には税法上と社会保険上の2種類があり、それぞれ異なる条件で運用されている
  • 基本的には年収の高い方の扶養に入れることで節税効果が高くなる
  • 2025年から103万円の壁が123万円に引き上げられ、扶養控除の適用範囲も拡大される
  • 年収差が1割を超える場合は、収入の多い方が社会保険の扶養者となる
  • 扶養控除による節税効果は、扶養する人の税率によって決まる
  • 年収の変化に応じて定期的に扶養の見直しを行うことが大切
  • 扶養以外にもiDeCoやふるさと納税などの節税対策を組み合わせると効果的

扶養の選択は家計に大きな影響を与える重要な決定です。夫婦の年収や働き方の変化に応じて、最適な選択を続けていくことで、家計の手取りを最大化できます。

制度は複雑に感じるかもしれませんが、基本的なルールを理解すれば適切な判断ができるはずです。わからないことがあれば、税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することも検討してみてくださいね。