退職したら確定申告が必要?申告すべきケース・申告方法をFPが解説!

退職をきっかけに「確定申告って必要なの?」と疑問に思う方は多いでしょう。実は、退職後の状況によって確定申告が必要になるケースと不要なケースがあります。

年の途中で退職した場合、多くの方が源泉徴収で税金を多く支払いすぎている可能性があります。確定申告をすることで、払いすぎた税金が戻ってくることも珍しくありません。

一方で、すべての退職者に確定申告が必要というわけではありません。再就職の時期や退職金の受け取り方によって、手続きの必要性は変わってきます。

この記事では、退職後にどんな場合に確定申告が必要になるのか、どのような手続きをすればよいのかを、わかりやすく解説していきます。税金の知識がない方でも安心して読み進められるよう、専門用語は使わずに説明しますね。

退職後の確定申告が必要なケース5つ

退職後に確定申告が必要になる主なケースは次のとおりです。

  • 年の途中で退職して再就職していない場合
  • 退職金を受け取ったが申告書を提出していない場合
  • 退職後にフリーランスや個人事業主になった場合
  • 副業で赤字がある場合
  • 公的年金を受給している場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

年の途中で退職して再就職していない場合

年の途中で会社を辞めて、その年の12月31日までに新しい会社に就職していない場合は、確定申告が必要です。

通常、会社員の方は年末調整で税金の計算が完了します。しかし、年の途中で退職すると年末調整を受けられません。そのため、毎月の給料から引かれていた所得税が払いすぎになっている可能性が高いのです。

例えば、9月に退職した場合、1月から9月までの給料をもとに正しい税額を計算し直す必要があります。多くの場合、税金が戻ってくることになるでしょう。

退職金を受け取ったが申告書を提出していない場合

退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していない場合は、確定申告が必要になります。

この申告書を提出していれば、退職金から適正な税額が差し引かれます。しかし、提出していないと一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまうのです。

実際の税率はもっと低い場合が多いため、確定申告をすることで税金が戻ってくる可能性があります。

退職後にフリーランスや個人事業主になった場合

会社を辞めてフリーランスや個人事業主として働き始めた場合は、必ず確定申告が必要です。

給与所得と事業所得は性質が異なるため、年末調整では対応できません。退職前の給与所得と退職後の事業所得を合算して、正しい税額を計算する必要があります。

事業所得では経費も計上できるため、適切に申告すれば税負担を軽減できる可能性もあります。

副業で赤字がある場合

退職前に副業をしていて、その副業で赤字が出ている場合も確定申告をおすすめします。

給与所得と事業所得の赤字を相殺することで、全体の所得を下げることができます。これを「損益通算」といい、結果として税金が戻ってくることがあります。

公的年金を受給している場合

定年退職後に公的年金を受給している場合で、年金以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

公的年金の収入が400万円以下であっても、他に所得があれば申告義務が発生します。アルバイトや不動産収入がある場合は注意が必要です。

退職後の確定申告が不要なケース3つ

一方で、確定申告が不要なケースもあります。

  • 年内に再就職して年末調整を受けた場合
  • 退職所得の受給に関する申告書を提出済みの場合
  • 所得が基礎控除額以下の場合

こちらも詳しく説明していきます。

年内に再就職して年末調整を受けた場合

退職した年の12月31日までに新しい会社に就職し、前の会社の源泉徴収票を提出して年末調整を受けた場合は、確定申告は不要です。

新しい会社で前職分も含めて年末調整をしてもらえるため、税金の計算が完了します。ただし、前職の源泉徴収票を提出し忘れた場合は、自分で確定申告をする必要があります。

退職所得の受給に関する申告書を提出済みの場合

退職金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出している場合は、原則として確定申告は不要です。

この申告書を提出することで、退職金から適正な税額が差し引かれるため、追加で手続きをする必要がありません。

所得が基礎控除額以下の場合

1年間の所得が基礎控除額(48万円)以下の場合は、確定申告は不要です。

パートやアルバイトで年収が103万円以下の場合などが該当します。ただし、源泉徴収されている場合は、確定申告をすることで税金が戻ってくる可能性があります。

確定申告をすると戻ってくるお金がある場合

確定申告をすることで税金が戻ってくるケースについて説明します。

源泉徴収で払いすぎた所得税

年の途中で退職した場合、毎月の給料から引かれていた所得税が払いすぎになっていることがよくあります。

会社は「1年間同じ給料をもらい続ける」という前提で所得税を計算しています。しかし、実際には途中で退職しているため、年収が予想より少なくなり、結果として税金を多く払いすぎてしまうのです。

各種控除を適用できる場合

退職後に国民健康保険や国民年金に加入した場合、これらの保険料は社会保険料控除として申告できます。

また、生命保険料控除や地震保険料控除なども年末調整で処理されていない場合は、確定申告で適用できます。

医療費控除やふるさと納税がある場合

医療費が年間10万円を超えた場合の医療費控除や、ふるさと納税による寄附金控除は、確定申告でしか適用できません。

これらの控除を適用することで、所得税や住民税を減らすことができます。

退職後の確定申告に必要な書類

確定申告に必要な書類について整理しましょう。

必ず準備するもの

確定申告には以下の書類が必要です。

  • 確定申告書
  • 源泉徴収票(退職した会社から発行されたもの)
  • マイナンバーがわかる書類
  • 本人確認書類
  • 銀行口座の情報(還付金を受け取る場合)

源泉徴収票は確定申告書の作成に必要ですが、税務署への提出は不要になりました。ただし、申告書を作成する際には必要なので、必ず手元に用意しておきましょう。

該当する場合に必要なもの

以下の書類は、該当する場合のみ必要になります。

  • 退職金の源泉徴収票
  • 国民健康保険料や国民年金保険料の支払証明書
  • 生命保険料控除証明書
  • 医療費の領収書やレシート
  • ふるさと納税の寄附金受領証明書

書類の入手方法と注意点

源泉徴収票は退職時に会社から受け取るのが一般的です。もし紛失した場合は、元の勤務先に再発行を依頼しましょう。

国民健康保険料や国民年金保険料の支払証明書は、それぞれの窓口で発行してもらえます。年末頃に自動的に送られてくることもあります。

退職後の確定申告のやり方

確定申告の具体的な手順について説明します。

申告書の作成方法

確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使って作成するのがおすすめです。

画面の案内に従って金額を入力するだけで、自動的に税額が計算されます。スマートフォンでも操作できるようになり、より便利になりました。

手書きで作成することも可能ですが、計算ミスを避けるためにもオンラインでの作成をおすすめします。

提出方法と期限

確定申告書の提出方法は3つあります。

  • e-Taxでオンライン提出
  • 郵送で提出
  • 税務署に直接持参

提出期限は翌年の3月15日です。2025年分の確定申告であれば、2026年3月17日が期限になります。

e-Taxでの申告手順

e-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードが必要です。スマートフォンでマイナンバーカードを読み取ることで、簡単に本人確認ができます。

オンラインで提出すれば、税務署に行く必要がなく、24時間いつでも提出できるので便利です。

退職金の確定申告について

退職金に関する確定申告について詳しく説明します。

退職所得の受給に関する申告書とは

「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金を受け取る際に会社に提出する書類です。

この申告書を提出することで、退職金に対する税額が正しく計算され、適正な金額が源泉徴収されます。提出しない場合は、一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。

申告書を提出し忘れた場合の対処法

もし申告書を提出し忘れた場合でも、確定申告をすることで正しい税額に修正できます。

多くの場合、実際の税率は20.42%より低いため、確定申告をすることで税金が戻ってきます。申告書を提出し忘れても、あきらめずに確定申告をしましょう。

退職金にかかる税金の計算方法

退職金の税額は以下の計算式で求められます。

退職所得金額 = (退職金 – 退職所得控除額) × 1/2

退職所得控除額は勤続年数によって決まります。20年以下の場合は「40万円 × 勤続年数」、20年を超える場合は「800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)」で計算します。

確定申告を忘れた場合のリスクと対処法

確定申告を忘れてしまった場合について説明します。

期限を過ぎた場合のペナルティ

確定申告の期限を過ぎてしまった場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。

ただし、一定の条件を満たす場合は、ペナルティが軽減されることもあります。期限から1か月以内に自主的に申告し、過去5年間に申告漏れがない場合などが該当します。

還付申告なら5年以内でOK

税金が戻ってくる還付申告の場合は、5年以内であればいつでも申告できます。

期限を過ぎてしまっても、あきらめずに申告しましょう。還付申告にはペナルティもありません。

遅れて申告する際の手続き

期限を過ぎて申告する場合でも、手続きは通常の確定申告と同じです。

ただし、税務署から調査の連絡が来る前に申告することで、ペナルティを軽減できる可能性があります。気づいたらできるだけ早く申告することをおすすめします。

よくある疑問と解決策

退職後の確定申告でよくある疑問について答えます。

源泉徴収票を紛失した場合

源泉徴収票を紛失した場合は、元の勤務先に再発行を依頼しましょう。

会社には源泉徴収票の保管義務があるため、通常は再発行してもらえます。ただし、時間がかかる場合もあるので、早めに連絡することが大切です。

複数の会社から退職金を受け取った場合

複数の会社から退職金を受け取った場合は、それぞれの退職金について確定申告が必要になる可能性があります。

各社で「退職所得の受給に関する申告書」を提出していても、合算した金額で税額を再計算する必要があります。

確定申告が不安な場合の相談先

確定申告に不安がある場合は、以下の場所で相談できます。

  • 税務署の相談窓口
  • 税理士
  • 市区町村の税務相談
  • 確定申告の無料相談会

特に税務署では、確定申告期間中に無料の相談窓口を設けています。わからないことがあれば、遠慮なく相談しましょう。

まとめ

今回の記事では、退職後の確定申告について詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。

  • 年の途中で退職して再就職していない場合は確定申告が必要
  • 退職金の申告書を提出していない場合も確定申告が必要
  • 年内に再就職して年末調整を受けた場合は確定申告不要
  • 確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくる可能性がある
  • 必要な書類は源泉徴収票やマイナンバーカードなど
  • 国税庁の作成コーナーを使えば簡単に申告書が作れる
  • 期限を過ぎても還付申告なら5年以内に申告可能

退職後の確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、多くの場合は税金が戻ってくるうれしい手続きです。わからないことがあれば税務署に相談しながら、適切に申告を行いましょう。