中古物件でも住宅ローン減税は利用できる?適用条件・手続き方法をFPが解説!

中古物件の購入を検討している方にとって、住宅ローン減税が使えるかどうかは大きな関心事ですよね。実は、中古物件でも条件を満たせば住宅ローン減税の対象になります。

2022年の税制改正により、中古住宅の住宅ローン減税は大幅に利用しやすくなりました。以前は築年数の制限が厳しく、耐火住宅で築25年、非耐火住宅で築20年という細かい条件がありましたが、現在は1982年以降に建築された住宅であれば基本的に対象となります。

控除額は年間最大14万円から21万円、期間は10年間で、新築住宅と同じ0.7%の控除率が適用されます。省エネ性能の高い住宅なら、さらに有利な条件で控除を受けることも可能です。

この記事では、中古物件で住宅ローン減税を受けるための具体的な条件や手続き方法について、わかりやすく解説していきます。

中古物件購入でも住宅ローン減税は受けられます

中古物件を購入する際、多くの方が「本当に住宅ローン減税は使えるの?」と不安に思われるかもしれません。安心してください。中古物件でも、一定の条件を満たせば住宅ローン減税の対象になります。

2022年の税制改正で中古住宅の条件が大幅に緩和

2022年の税制改正により、中古住宅の住宅ローン減税は劇的に利用しやすくなりました。以前は耐火住宅で築25年以内、非耐火住宅で築20年以内という厳しい築年数制限がありましたが、現在は1982年以降に建築された住宅であれば、登記簿の建築年だけで証明できるようになっています。

特別な検査や証明書も必要ありません。これにより、築40年を超える物件でも住宅ローン減税の対象となる可能性が広がりました。

新築との違いは控除額と期間のみ

中古住宅の住宅ローン減税は、基本的な仕組みは新築住宅と同じです。控除率は新築と同じ0.7%で計算されます。

ただし、控除期間は新築の13年間に対して10年間となっています。また、借入限度額も新築より低く設定されているのが特徴です。

築40年の物件でも対象になる可能性

1982年以降に建築された住宅であれば、築年数に関係なく住宅ローン減税の対象となります。つまり、築40年を超える物件でも条件を満たせば控除を受けられるということです。

1981年以前の建物の場合は、耐震基準適合証明書や既存住宅売買瑕疵保険への加入が必要になりますが、これらの条件をクリアすれば住宅ローン減税の適用が可能です。

中古物件の住宅ローン減税で知っておきたい基本情報

中古物件で住宅ローン減税を受ける場合の具体的な控除額や期間について詳しく見ていきましょう。

控除額は年間最大14万円、10年間で140万円

一般的な中古住宅の場合、借入限度額は2,000万円に設定されています。控除率0.7%を適用すると、年間最大で14万円(2,000万円×0.7%)の控除を受けることができます。

10年間の控除期間を通じて計算すると、最大で140万円の税額控除が可能です。ただし、実際の控除額は住宅ローンの年末残高によって決まるため、ローン残高が減るにつれて控除額も減少していきます。

控除率は0.7%(新築も同じ)

中古住宅の住宅ローン減税の控除率は、新築住宅と同じ0.7%です。これは2022年の税制改正で統一されたもので、以前の1.0%から引き下げられましたが、中古住宅と新築住宅で差がなくなったことは大きなメリットといえるでしょう。

控除額の計算式は「年末時点の借入残高(借入限度額を上限)×0.7%」となります。

省エネ住宅なら控除額がアップ

中古住宅でも、省エネ基準を満たす住宅であれば借入限度額が3,000万円に引き上げられます。この場合、年間最大で21万円(3,000万円×0.7%)、10年間で最大210万円の控除を受けることができます。

対象となるのは「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかに該当する住宅です。

中古物件で住宅ローン減税を受ける5つの条件

中古物件で住宅ローン減税を受けるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 1982年以降に建築された住宅であること
  • 住宅ローンの借入期間が10年以上
  • 年収が2000万円以下(合計所得金額)
  • 床面積が50㎡以上
  • 購入から6か月以内に入居すること

それぞれの条件について詳しく解説していきます。

1982年以降に建築された住宅であること

中古住宅で住宅ローン減税を受ける最も重要な条件が、1982年1月1日以降に建築された住宅であることです。これは新耐震基準が施行された年を基準としています。

登記簿謄本に記載されている建築年月日で確認できるため、特別な検査や証明書は必要ありません。1981年以前の建物の場合は、耐震基準適合証明書の取得などが必要になります。

住宅ローンの借入期間が10年以上

住宅ローンの返済期間が10年以上であることが条件です。これは新築住宅と同じ条件で、短期間のローンでは住宅ローン減税の対象になりません。

また、銀行などの金融機関からの借入である必要があり、親族や知人からの借入は対象外となります。

年収が2000万円以下(合計所得金額)

住宅ローン減税を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である必要があります。ただし、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は、所得制限が1,000万円以下になります。

合計所得金額とは、給与所得だけでなく、事業所得や不動産所得なども含めた総額のことです。

床面積が50㎡以上

住宅の床面積が50㎡以上であることが基本条件です。マンションの場合は専有部分の面積で判断され、共用部分は含まれません。

2025年においては、床面積が40㎡以上50㎡未満でも住宅ローン減税の対象になりますが、この場合は所得制限が1,000万円以下になります。

購入から6か月以内に入居すること

住宅を取得してから6か月以内に入居し、その年の12月31日まで住み続けることが必要です。また、住宅の床面積の2分の1以上が自己の居住用である必要があります。

店舗兼住宅の場合も、居住部分が全体の半分以上を占めていることが条件となります。

築年数による適用条件の詳細

中古住宅の築年数は、住宅ローン減税の適用において重要な要素です。建築年代によって必要な手続きが変わってきます。

1982年以降の建物は書類不要で対象

1982年1月1日以降に建築された住宅は、登記簿謄本の建築年月日だけで住宅ローン減税の対象となります。特別な耐震証明書や検査は必要ありません。

これは新耐震基準が施行された年を基準としており、この基準により建築された住宅は一定の耐震性能を有していると判断されるためです。手続きが簡単で、多くの中古住宅が対象となります。

1981年以前の建物は耐震証明が必要

1981年以前に建築された住宅でも、住宅ローン減税を受けることは可能です。ただし、耐震基準に適合していることを証明する書類が必要になります。

具体的には、耐震基準適合証明書の取得や、既存住宅売買瑕疵保険への加入が求められます。これらの手続きには時間と費用がかかるため、購入前に確認しておくことが大切です。

耐震基準適合証明書の取得方法

耐震基準適合証明書は、建築士などの専門家による耐震診断を受けて取得します。診断の結果、現行の耐震基準に適合していることが確認されれば証明書が発行されます。

費用は物件の規模や構造によって異なりますが、一般的には10万円から30万円程度かかることが多いです。

既存住宅売買瑕疵保険の活用

既存住宅売買瑕疵保険に加入することでも、住宅ローン減税の対象となります。この保険は、住宅の構造上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に瑕疵があった場合に補償を受けられる制度です。

保険加入には事前の検査が必要で、一定の品質基準を満たしている必要があります。

省エネ住宅なら控除額が最大210万円にアップ

中古住宅でも省エネ性能の高い住宅を購入すれば、通常よりも有利な条件で住宅ローン減税を受けることができます。

長期優良住宅・低炭素住宅の場合

長期優良住宅低炭素住宅の認定を受けた中古住宅の場合、借入限度額が3,000万円に引き上げられます。年間最大21万円、10年間で最大210万円の控除を受けることが可能です。

これらの住宅は、耐久性や省エネ性能などの厳しい基準をクリアした高品質な住宅です。中古住宅でも認定を受けている物件があるため、購入前に確認してみましょう。

ZEH水準省エネ住宅の場合

ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅も、借入限度額3,000万円の対象となります。ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、年間の一次エネルギー消費量がおおむねゼロになる住宅のことです。

中古住宅でZEH水準を満たす物件は限られますが、該当すれば大きな税制メリットを受けることができます。

省エネ基準適合住宅の場合

省エネ基準適合住宅も借入限度額3,000万円の対象です。これは国が定める省エネルギー基準に適合している住宅のことで、断熱性能や設備の効率性などが一定の水準を満たしています。

比較的多くの中古住宅が該当する可能性があるため、購入を検討している物件が省エネ基準に適合しているかどうか確認してみることをおすすめします。

証明書類の準備が必要

省エネ住宅として住宅ローン減税の優遇を受けるためには、該当することを証明する書類の提出が必要です。具体的には、建設住宅性能評価書や住宅省エネルギー性能証明書などが必要になります。

これらの書類は、工務店や不動産会社から取得できることが多いため、購入時に確認しておきましょう。

住宅ローン減税の手続き方法を分かりやすく解説

住宅ローン減税を受けるためには、適切な手続きが必要です。初年度と2年目以降で手続き方法が異なるため、それぞれについて詳しく説明します。

初年度は確定申告が必須

住宅ローン減税を初めて受ける場合は、確定申告が必要です。会社員の方でも、初年度だけは年末調整では手続きできないため注意が必要です。

確定申告は、住宅を購入して入居した翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います。ただし、住宅ローン減税は還付申告にあたるため、1月1日から受付が開始され、5年以内であれば申告が可能です。

2年目以降は年末調整でOK

給与所得者の場合、2年目以降は年末調整で住宅ローン減税の手続きができます。税務署から送付される「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」と、金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を会社に提出するだけです。

個人事業主の方は年末調整がないため、2年目以降も確定申告での手続きが必要になります。

必要書類の準備リスト

住宅ローン減税の確定申告には、以下の書類が必要です。

  • 確定申告書
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅ローンの借入残高証明書
  • 源泉徴収票(給与所得者の場合)
  • 登記事項証明書
  • 売買契約書のコピー
  • 住民票の写し
  • マイナンバーカード(本人確認書類)

それぞれの書類について詳しく見ていきましょう。

住民票の写し

住民票の写しは、購入した住宅に実際に居住していることを証明するために必要です。市区町村役場で取得できます。

住宅を購入してから住民票を移していない場合は、住宅ローン減税の対象になりませんので注意が必要です。

登記事項証明書

登記事項証明書は、住宅の所有者や床面積、建築年月日などを確認するために必要です。法務局の窓口またはオンライン申請システムで取得できます。

中古住宅の場合、建築年月日が1982年以降であることを証明する重要な書類でもあります。

住宅ローンの残高証明書

住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書は、住宅ローンを借り入れた金融機関から送付されます。この書類により、年末時点でのローン残高を確認します。

通常、10月から11月頃に金融機関から郵送されてきます。紛失した場合は、金融機関に再発行を依頼しましょう。

売買契約書のコピー

売買契約書のコピーは、住宅の取得価額や取得年月日を証明するために必要です。原本ではなくコピーで構いません。

契約書には印紙が貼られていることを確認し、すべてのページをコピーして提出します。

確定申告の具体的な手順

住宅ローン減税の確定申告は、正しい手順で行うことでスムーズに進めることができます。

e-Taxでの申告方法

e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅からインターネットで確定申告ができます。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に従って入力するだけで控除額が自動計算されます。

e-Taxで申告する場合、添付書類はPDF形式のイメージデータとして提出できるため便利です。マイナンバーカードやICカードリーダライタが必要になります。

紙での申告方法

紙での申告を選択する場合は、確定申告書を印刷して手書きで記入します。完成した申告書は、管轄の税務署に直接持参するか、郵送で提出します。

郵送の場合は、確定申告書は信書に該当するため、普通郵便または信書便で送付する必要があります。書類の紛失を防ぐため、簡易書留での送付がおすすめです。

計算明細書の書き方のポイント

住宅借入金等特別控除額の計算明細書は、住宅ローン減税の控除額を計算するための重要な書類です。住宅の取得価額、年末のローン残高、床面積などを正確に記入する必要があります。

計算を間違えやすい箇所もあるため、国税庁のホームページにある記載例を参考にしながら慎重に記入しましょう。

申告期限と注意点

確定申告の期限は、原則として申告対象年の翌年3月15日です。2025年の確定申告期間は2月17日から3月17日までとなっています。

ただし、住宅ローン減税は還付申告のため、期限を過ぎても5年以内であれば申告が可能です。とはいえ、早めに手続きを済ませることで還付金を早く受け取ることができます。

中古物件購入で住宅ローン減税を最大限活用する3つのコツ

中古物件で住宅ローン減税のメリットを最大限に活用するためのポイントをご紹介します。

購入前に適用条件を必ず確認

物件を購入する前に、住宅ローン減税の適用条件を満たしているかどうか必ず確認しましょう。特に築年数については、登記簿謄本で建築年月日を確認することが重要です。

1981年以前の建物の場合は、耐震基準適合証明書の取得費用なども考慮して購入を検討する必要があります。不動産会社に事前に相談して、住宅ローン減税の対象になるかどうか確認してもらいましょう。

省エネ性能の証明書取得を検討

購入を検討している物件が省エネ基準を満たしている可能性がある場合は、証明書の取得を検討してみましょう。借入限度額が2,000万円から3,000万円に引き上げられるため、大きな税制メリットを受けることができます。

証明書の取得には費用がかかりますが、10年間で最大70万円の控除額アップが期待できるため、費用対効果を検討する価値があります。

他の優遇制度との併用も可能

住宅ローン減税は、他の住宅取得支援制度と併用できる場合があります。例えば、自治体の住宅取得補助金や、住宅取得等資金の贈与税非課税制度などです。

ただし、一部の制度では併用に制限がある場合もあるため、事前に確認することが大切です。税理士や不動産会社に相談して、最適な組み合わせを検討しましょう。

よくある疑問にお答えします

中古物件の住宅ローン減税について、よく寄せられる疑問にお答えします。

リフォーム費用も控除対象になる?

中古住宅を購入してリフォームを行う場合、一定の条件を満たせばリフォーム費用も住宅ローン減税の対象になります。対象となるのは、増築・改築、耐震改修工事、バリアフリー改修工事、省エネ改修工事などです。

ただし、リフォーム工事費が100万円を超える必要があり、住宅ローンを利用して行う工事に限られます。また、リフォーム促進税制との併用はできないため、どちらが有利か検討する必要があります。

親族間売買でも適用される?

親族や特別な関係がある人からの住宅取得は、住宅ローン減税の対象外となります。これは、税制上の優遇措置の濫用を防ぐためです。

親子間や夫婦間での売買、会社と役員間での売買などは対象になりません。第三者からの購入であることが条件となります。

住み替えの場合はどうなる?

住み替えの場合、以前の住宅で「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」などを利用していると、住宅ローン減税を受けられない場合があります

具体的には、居住年およびその前の2年の計3年間にこれらの特例を受けていると、住宅ローン減税の対象外となります。住み替えを検討している場合は、税理士に相談することをおすすめします。

控除しきれない場合の住民税減税

所得税から控除しきれない場合は、翌年の住民税からも控除されます。住民税からの控除限度額は年間13万6,500円(前年分の所得税の課税総所得金額等の7%のいずれか少ない金額)です。

これにより、所得税が少ない方でも住宅ローン減税のメリットを受けることができます。

注意したいポイントと落とし穴

住宅ローン減税を受ける際に注意すべきポイントをご紹介します。

所得制限に引っかかるケース

年間の合計所得金額が2,000万円を超える場合は、住宅ローン減税の対象外となります。給与所得だけでなく、事業所得や不動産所得、株式の譲渡所得なども含めて計算されるため注意が必要です。

特に、住宅を売却した年は譲渡所得が発生する可能性があるため、所得制限に引っかからないよう事前に計算しておきましょう。

住宅ローン以外の借入がある場合

住宅ローン以外にも借入がある場合、住宅ローン減税の対象となるのは住宅取得のための借入のみです。リフォームローンや諸費用ローンなどは、使途が明確に住宅取得に関連している場合のみ対象となります。

借入の内訳が複雑な場合は、金融機関や税理士に相談して対象となる借入額を確認しましょう。

法改正による制度変更の可能性

住宅ローン減税の制度は、税制改正により変更される可能性があります。現在の制度は2025年入居分まで適用されることが決まっていますが、2026年以降の制度については今後の税制改正で決定される予定です。

購入を検討している場合は、最新の制度内容を確認することが大切です。国土交通省や国税庁のホームページで最新情報をチェックしましょう。

まとめ:中古物件でも住宅ローン減税をしっかり活用しよう

今回の記事では、中古物件での住宅ローン減税について詳しく解説しました。以下に重要なポイントをまとめます。

  • 中古物件でも1982年以降に建築された住宅なら住宅ローン減税の対象になる
  • 年間最大14万円、10年間で140万円の控除が受けられる
  • 省エネ住宅なら借入限度額が3,000万円に増額され最大210万円の控除が可能
  • 初年度は確定申告が必須で2年目以降は年末調整で手続きできる
  • 床面積50㎡以上、年収2,000万円以下などの条件をすべて満たす必要がある
  • 購入前に適用条件を確認し必要書類を準備することが大切
  • 1981年以前の建物は耐震証明書などの追加書類が必要

中古物件の住宅ローン減税は、2022年の税制改正により大幅に利用しやすくなりました。適切な手続きを行えば、新築住宅と同様に大きな税制メリットを受けることができます。

購入を検討している物件が住宅ローン減税の対象になるかどうか、事前にしっかりと確認して、賢くマイホームを取得してくださいね。不明な点があれば、不動産会社や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。