職場や友人関係で「あの人、いつもマウントをとってくるよね」という話を聞いたことはありませんか。最近よく使われるこの言葉ですが、正確な意味や由来を知らない人も多いのではないでしょうか。
マウントをとる人と接するのは、正直なところ疲れるもの。でも、その人の心理を理解すれば、もっと上手に付き合えるようになります。
この記事では、マウントをとるという言葉の意味や由来から、マウントをとる人の心理、そして実際に遭遇したときの対処法まで詳しく解説します。人間関係のストレスを減らすヒントが見つかるはずです。
「マウントをとる」の意味とは?
「マウントをとる」とは、相手に対して自分の優位性を示そうとする行為のことです。簡単に言えば、「自分の方が上だ」ということを相手や周囲にアピールする行動を指します。
マウントをとるの基本的な意味
マウントをとるという表現は、自分が相手よりも優れていることを強調したり、威圧的な態度で相手を萎縮させたりする行為を表します。これは精神的な意味での「上に立つ」状態を作り出そうとする行動です。
具体的には、学歴や収入、経験などを自慢して相手を見下したり、アドバイスという名目で自分の実績を語ったりする行為が該当します。相手との会話で常に自分が主導権を握ろうとする傾向も見られます。
マウンティングとの違い
「マウントをとる」と「マウンティング」は基本的に同じ意味で使われています。どちらも相手に対する優位性のアピールを指す言葉です。
ただし、「マウンティング」という表現の方が動物行動学の専門用語としての色合いが強く、「マウントをとる」の方が日常会話でより自然に使われる傾向があります。
日常会話での使われ方
現在では、インターネットから始まったこの表現が一般社会にも広く浸透しています。「マウンティング女子」「マウンティング男子」といった言葉も生まれ、批判的な意味を込めて使われることが多いです。
職場での会話では「上司がまたマウントをとってきた」「同僚のマウント発言にうんざり」といった使い方をされています。友人関係でも「あの子、いつも自慢話でマウントをとってくる」という表現が聞かれます。
マウントをとるの由来と語源
マウントをとるという言葉の由来には、動物行動学と格闘技の2つの説があります。どちらも「上に乗る」「優位に立つ」という共通点があります。
動物行動学から生まれた言葉
最も有力な由来は、動物行動学の専門用語「マウンティング」です。これは哺乳類の雄が他の雄に馬乗りする行動を指し、群れの中での優位性を確認するための行為として知られています。
特にサル山でのサルの行動が有名で、上位のサルが下位のサルに対してマウンティングを行うことで、序列を明確にします。この行動が人間の社会的な優位性争いと似ていることから、比喩的に使われるようになりました。
サル山のマウンティング行動
サル山では、オス同士が自分の地位を確認し合うためにマウンティング行動を取ります。これは単なる交尾行動ではなく、社会的な序列を示すコミュニケーション手段です。
上位のサルが下位のサルに対してこの行動を取ることで、「自分の方が強い」「自分の方が上の立場にある」ということを群れ全体に示します。この行動パターンが、人間社会での優位性アピールと酷似していることから、比喩として使われるようになりました。
格闘技の「マウントポジション」
もう一つの由来として、格闘技の「マウントポジション」があります。これは相手を床に押し倒して馬乗りになった体勢のことで、一方的に攻撃できる圧倒的に有利なポジションです。
この体勢では相手の身動きを封じ込めることができ、試合の主導権を完全に握ることができます。このような「相手を支配する」「優位に立つ」という意味から、精神的な優位性を示す行為にも使われるようになりました。
インターネットから一般社会への広がり
「マウントをとる」という表現は、最初はインターネットの掲示板やSNSなどで使われ始めました。ネット用語やスラングとして広まった後、徐々に日常会話でも使われるようになりました。
現在では、テレビや雑誌でも普通に使われる一般的な表現となっています。特に人間関係の悩みを扱う記事や番組では、頻繁に登場する言葉です。
マウントをとる人の心理5つ
マウントをとる人の心理を理解することで、その行動の背景が見えてきます。実は、多くの場合、自信のなさや不安が隠れています。
1. 承認欲求が強すぎる
マウントをとる人の多くは、承認欲求が非常に強い傾向があります。他人から認められたい、評価されたいという気持ちが人一倍強いのです。
心理学者マズローの欲求5段階説でも、承認欲求が満たされないと劣等感や無力感を感じるとされています。そのため、自分から積極的にアピールすることで、周囲からの注目や評価を得ようとします。
2. 自分に自信がない
意外に思われるかもしれませんが、マウントをとる人の多くは実は自分に自信がありません。自信のなさを隠すために、必死に強く見せようとしているのです。
自分の価値を疑っているからこそ、他人との比較で優位に立とうとします。これは一種の防衛本能で、自尊心を保つための手段として使われています。
3. 劣等感を隠したい
マウンティングは劣等感を恐れている裏返しでもあります。「自分は本当はバカにされているのではないか」という不安や猜疑心が働いているのです。
この劣等感を避けるために、他人から認めてもらうことで心の安定を図ろうとします。表面的には自信満々に見えても、内心では常に不安を抱えている状態です。
4. 注目を浴びたい
自己顕示欲が強く、常に周囲から注目を浴びていたいという心理も働いています。自分が話の中心にいないと不安になり、何とかして注目を集めようとします。
そのため、自分の経験や実績を誇張して話したり、他人の話を自分の話にすり替えたりする傾向があります。会話の主導権を握ることで、安心感を得ようとしているのです。
5. 無自覚でやっている
最も重要なポイントは、マウントをとる人の多くが自分の行動を自覚していないということです。「今からマウントをとります」と宣言してやる人はいません。
深層心理では承認欲求や劣等感などの複雑な感情が働いていますが、本人は無意識レベルでこの行動を取っています。そのため、指摘されても理解できないことが多いのです。
マウントをとる人の特徴と行動パターン
マウントをとる人には、共通する特徴や行動パターンがあります。これらを知っておくことで、早めに対処できるようになります。
自慢話が多い
マウントをとる人の最も分かりやすい特徴は、自慢話の多さです。学歴、収入、実績、経験など、あらゆることを自慢の材料にします。
会話の中で「私は○○大学出身で」「年収は○○万円で」「以前○○の仕事をしていて」といった話が頻繁に出てきます。相手の話を聞いているようで、実は自分の話に持っていこうとする傾向があります。
相手を否定したがる
他人の意見や価値観を否定することで、自分の正しさを主張しようとします。「あなたみたいな生き方は絶対だめ」「そんな考え方は間違っている」といった決めつけが多いのも特徴です。
自分の考えが絶対に正しいと思い込んでいるため、異なる意見を受け入れることができません。相手を否定することで、相対的に自分を上位に位置づけようとします。
アドバイスという名の自分語り
「アドバイスしてあげる」という優しさを装いながら、実は自分の実績や経験を語るパターンも多く見られます。表面的には相手のためを思っているように見えますが、実際は自分をアピールする機会として利用しています。
「私の経験では」「私だったら」「私が以前○○したときは」といった自分を主語にした話が中心になります。相手の悩みよりも、自分の成功体験を語ることに重点が置かれています。
ステータスを誇示する
学歴、職業、収入、持ち物など、目に見えるステータスを誇示したがります。ブランド品を身につけたり、高級車に乗ったりして、自分の社会的地位をアピールします。
会話でも「私の会社では」「私の部署では」といった所属組織の権威を借りて話すことが多いです。個人の能力よりも、外的な要素で自分を大きく見せようとします。
決めつけが激しい
相手に対してレッテルを貼ったり、決めつけたりする傾向があります。「あなたって本当に○○よね」といった否定的なニュアンスを含んだ発言が多いのも特徴です。
相手の人格や能力を一方的に判断し、自分の価値観を押し付けようとします。相手の立場や気持ちを考慮せず、自分の基準で物事を判断する傾向があります。
マウントをとる人がよく使う言葉・フレーズ
マウントをとる人が使いがちな言葉やフレーズを知っておくと、早めに察知できるようになります。
学歴・収入系のマウント
「私は○○大学出身だから」「年収○○万円もらっているから」「一流企業に勤めているから」といった学歴や収入を前面に出した発言が典型的です。
「俺と違って何の役職にもついていないと、有休も取りやすくていいなあ」のように、相手をうらやましがるふりをしながら自分の地位をアピールするパターンもあります。
経験・実績系のマウント
「私は○○の経験があるから」「以前○○を達成したから」「部長に『期待の星だ』と言われたから」といった自分の経験や実績を強調する発言です。
アドバイスという形を取りながら、「私は過去に○○という目標を立てて○○を達成して」と自分の成功体験を語るパターンが多く見られます。
否定・見下し系のマウント
「あなたみたいな生き方は絶対だめ」「そんな考え方は間違っている」「私だったらそんな人生嫌になる」といった相手を否定する発言です。
相手の価値観や生き方を一方的に批判し、自分の方が正しいということを主張しようとします。
アドバイス系のマウント
「あなたのためを思って言うけど」「経験者として言わせてもらうと」「私があなたの立場だったら」といった前置きで始まる発言です。
表面的には相手のことを思っているように見えますが、実際は自分の優位性を示すための手段として使われています。
マウントをとられた時の対処法6つ
マウントをとられたときの対処法を知っておくことで、ストレスを軽減し、人間関係を円滑に保つことができます。
1. さらっと受け流す
最も効果的な対処法は、相手の発言を軽く受け止めて適当に流すことです。「へー、そうなんだ」「なるほどね」「すごいね、それで?」といった軽い相槌で対応します。
マウントをとる人は自分が優位であることを示したいという心理が強いため、過剰に反応すると相手の思うツボになってしまいます。真面目に受け止めすぎず、「関わるだけ時間の無駄」と割り切ることが大切です。
2. 適度に認めてあげる
マウントをとる人の多くは承認欲求が強く、実は自信のなさを隠しています。そのため、適度に認めてあげることで安心し、マウント行為が収まることがあります。
「素晴らしいですね」「さすがです」「すごいですね」といった言葉で相手を評価し、受け止める姿勢を見せることで、波風を立てずにやり過ごすことができます。
3. 話題を自然に変える
マウント発言が始まったら、さりげなく話題を変えるのも有効な方法です。相手の発言を一通り聞いた後で、「そういえば、○○の件はどうなりましたか?」といった具合に自然に話題を転換します。
相手が話の主導権を握ろうとしても、こちらが上手に話題をコントロールすることで、マウント合戦を避けることができます。
4. 距離を置く
可能であれば、マウントをとる人とは物理的・心理的な距離を置くのが最善の対処法です。職場など完全に避けられない場合でも、必要最小限の関わりに留めることでストレスを軽減できます。
プライベートな関係であれば、徐々に連絡を減らしたり、会う機会を少なくしたりして、自然に距離を置くことを考えてみてください。
5. 冷静に見つめる
マウントをとる人の行動を冷静に観察し、「この人は自信がないから必死に強く見せようとしているんだな」と客観視することも大切です。
その人の真意が分かれば、「子どもじみた行動だな」と受け流すことができるようになります。感情的にならず、大人の対応を心がけましょう。
6. 不快であることを伝える
どうしても我慢できない場合は、はっきりと不快であることを伝えるのも一つの方法です。「やめてください」「何でそんなことを言うのですか?」「今、忙しいのでやめてもらえますか」といった具合に、感情的にならず端的に伝えます。
ただし、この方法は関係が悪化するリスクもあるため、相手との関係性や状況をよく考えて使用することが重要です。
マウントをとる人への接し方のコツ
マウントをとる人との関係を円滑に保つためのコツを押さえておきましょう。
マウントで返すのは絶対NG
マウントをとられたときに、同じようにマウントで返すのは絶対に避けるべきです。これをやってしまうと、終わりのないマウント合戦に発展し、関係がさらに悪化してしまいます。
特にプライドが高い人ほど、自分の優位性を守るためにさらに強いマウントを仕掛けてくる傾向があります。感情的になって言い返すのではなく、冷静に対応することが大切です。
感情的にならない
マウントをとられると、悔しさやイライラを感じるのは自然なことです。しかし、感情的になって反応してしまうと、相手の思うツボになってしまいます。
深呼吸をして心を落ち着け、「この人はこういう性格なんだ」と客観視することで、冷静な対応ができるようになります。
相手の心理を理解する
マウントをとる人の心理を理解することで、その行動に対する見方が変わります。承認欲求の強さや自信のなさが背景にあることを知れば、怒りよりも理解の気持ちが生まれるかもしれません。
相手を変えることはできませんが、自分の受け取り方を変えることはできます。
自分のメンタルを守る
何よりも大切なのは、自分のメンタルヘルスを守ることです。マウントをとる人に振り回されて、自分が疲弊してしまっては本末転倒です。
必要に応じて信頼できる人に相談したり、ストレス発散の方法を見つけたりして、自分の心の健康を最優先に考えましょう。
職場でマウントをとる人への対応
職場でのマウント行為は、仕事の効率や職場の雰囲気に大きく影響します。立場によって対応方法を変える必要があります。
上司がマウントをとる場合
上司からのマウント行為は最も対処が難しいケースです。直接的に反論することは難しいため、基本的には受け流すことが重要になります。
「勉強になります」「ありがとうございます」といった言葉で適度に認めつつ、仕事に集中することで距離を保ちましょう。あまりにもひどい場合は、人事部や上位の管理職に相談することも検討してください。
同僚がマウントをとる場合
同僚の場合は、比較的対処しやすい立場にあります。適度に受け流しながら、必要に応じて話題を変えたり、距離を置いたりすることができます。
チームワークに影響が出る場合は、上司に相談することも考えてみてください。ただし、告げ口のような形にならないよう、建設的な解決策を提案することが大切です。
部下がマウントをとる場合
部下からのマウント行為は、指導の機会として捉えることもできます。ただし、感情的になって叱責するのではなく、冷静に対応することが重要です。
「そういう発言は職場では適切ではない」「チームワークを大切にしよう」といった具合に、建設的なフィードバックを行いましょう。
友人・知人がマウントをとる場合の対処
プライベートな関係でのマウント行為は、職場とは異なる対処が必要です。
親しい関係での対応方法
親しい友人の場合は、冗談交じりに「なんでマウントをとるんですか~」とツッコミを入れてみるのも一つの方法です。カジュアルな関係であれば、このような軽いアプローチが効果的な場合があります。
ただし、相手の性格や関係性をよく考えて、適切なタイミングで行うことが大切です。
関係を続けるか見直すかの判断
友人関係でのマウント行為が続く場合は、その関係を続けるかどうかを真剣に考える必要があります。友人関係は本来、お互いを尊重し合う対等な関係であるべきです。
一方的にマウントをとられ続ける関係は、健全な友人関係とは言えません。自分の精神的な健康を最優先に考えて、関係の見直しを検討することも大切です。
自分も無意識にマウントをとっていないかチェック
他人のマウント行為を批判する前に、自分も無意識にマウントをとっていないかを振り返ってみることも重要です。多くの人が無自覚でマウント行為を行っている可能性があります。
自分の発言や行動を客観視し、相手を不快にさせていないかを定期的にチェックしてみましょう。
マウントをとる人にならないために
自分がマウントをとる人にならないよう、日頃から気をつけるべきポイントがあります。
自分の承認欲求と向き合う
まずは自分の承認欲求の強さを認識し、それと上手に付き合うことが大切です。他人からの評価を求めすぎず、自分自身の価値を内面から見つけることを心がけましょう。
承認欲求が強すぎると、無意識にマウント行為に走ってしまう可能性があります。自分の感情を客観視し、コントロールする習慣をつけることが重要です。
相手を尊重する気持ちを持つ
会話では常に相手を尊重する気持ちを持つことが大切です。自分の意見や経験を話すときも、相手の立場や気持ちを考慮して話すよう心がけましょう。
相手の話をしっかりと聞き、理解しようとする姿勢が、良好な人間関係を築く基盤となります。
自慢話を控える
自分の成功体験や実績を話すときは、相手の反応を見ながら適度に控えることが大切です。自慢話が多すぎると、相手に不快感を与えてしまう可能性があります。
話の内容よりも、相手との関係性や会話の流れを重視することで、より良いコミュニケーションができるようになります。
相手の話をしっかり聞く
良いコミュニケーションの基本は、相手の話をしっかりと聞くことです。自分の話ばかりするのではなく、相手の話に興味を持ち、質問をしたり共感したりすることが大切です。
相手が話しやすい雰囲気を作ることで、お互いにとって心地よい関係を築くことができます。
まとめ
マウントをとるという言葉は、動物行動学や格闘技から生まれた表現で、現在では日常的に使われるようになりました。マウントをとる人の多くは、承認欲求の強さや自信のなさが背景にあり、多くの場合は無自覚で行っています。
マウントをとられたときは、感情的にならずに受け流すことが最も効果的な対処法です。相手の心理を理解し、適度に認めてあげたり、距離を置いたりすることで、ストレスを軽減できます。
大切なのは、自分のメンタルヘルスを守ることです。マウントをとる人に振り回されすぎず、冷静に対応することで、より良い人間関係を築いていけるでしょう。また、自分自身もマウントをとる人にならないよう、日頃から相手を尊重する気持ちを持つことが重要です。
人間関係の悩みは尽きませんが、相手の心理を理解し、適切な対処法を知ることで、きっと楽になるはずです。